箏がひらく和と西洋の共存〜CDとライブステージが実現
1998年生まれの若き箏奏者LEOが、新譜 『藤倉大:箏協奏曲』 をリリースする。クールなルックスから溢れる、ナチュラルに熱っぽい語り口。熱量の大きさを感じる音楽家だ。
「箏協奏曲」はLEOのために書かれた新作で、今年4月末に初演したばかり。
「箏とオーケストラがひとつの生命体になって音を出しているような作品。オケが箏の音を増幅したり、箏の音に反応したり。余白があって、だから箏の表現を自分なりに自由に入れられる。和楽器だからこそ意識してそういう書き方をしてくださっていると思います。ソロ楽器とオケの関係性に新しいあり方を示す革新的な協奏曲。すごく気に入っています」
じつはこの協奏曲、LEOのために書かれ、2019年に初演された独奏曲「竜」をベースに作曲された(箏は龍をかたどったとされ、各部位にも龍角、龍舌、龍尾などの呼び名がある)。アルバムにはその「原曲」も収録されており、両者を聴き比べることができるのはとても面白い。
「師匠の沢井一恵先生もおっしゃっているのですが、『竜』自体が、箏の新しい可能性を発見した作品です。協奏曲を聴くとさらに、『竜』の背後に広がる、音としては書かれていなかった世界があったのを感じていただけるはずです。僕自身、協奏曲を経て 『竜』 に新しい発見がいくつもあり、演奏も変わりました」
鈴木優人指揮読売日本交響楽団との初演は緊急事態宣言の発令により無観客開催となり、ライブ収録だけが行われたが、7月にはすぐ、今度はセバスティアン・ヴァイグレと読響で再演(有観客初演)の機会を得た幸福な作品。
「優人さんはチェンバロ奏者でもありますが、箏の発音がチェンバロと近いんじゃないかと、今回初めて気づきました。だからなのか、発音のタイミングや箏の表現を絶妙に汲み取ってくださった。ヴァイグレさんはオペラ指揮者だけに、僕の呼吸を超能力のように読み取ってくださる。どちらもとても素敵な体験でした」
アルバムにはさらに「つき」「芯座」の藤倉の新作2曲も。協奏曲作曲の過程で生まれた素材から派生した作品だ(「突き」「芯座」は箏関連の言葉)。ソロ→協奏曲→ソロという創作ループだが、そこで終わらない。協奏曲には9月に「箏+ピアノ」版、10月に「箏+室内楽」版の初演も待っている。汲めども尽きぬ泉のように。後者は、「古典を現代に迎える」と銘打って、高橋悠治と坂東祐大の委嘱初演もある壮絶に豪華なリサイタル。坂入健司郎指揮の特別編成の室内管弦楽団や藤原道三(尺八)と共演。LEOの旺盛な活躍から目が離せない。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2021年10月号より)
LEO 箏リサイタル〜古典を現代に迎える〜
2021.10/22(金)19:00 紀尾井ホール
問:Mitt 03-6265-3201
https://columbia.jp/leo-recital/
他公演
9/25(土) 兵庫県立芸術文化センター(小)(0798-68-0255)
CD『藤倉大:箏協奏曲』
日本コロムビア
COCQ-85538
¥3300(税込)
2021.9/29(水)発売