デフロの描く2大ヴェリズモ・新国立劇場《カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師》開幕

 新国立劇場の新制作、マスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》&レオンカヴァッロ《道化師》の上演が明日14日から始まります。それに先だち、11日にゲネラルプローベ(総通し稽古)が行われました。

 指揮はオペラの名匠、イタリアのレナート・パルンボ。オペラ経験豊かな東京フィルを自在にドライヴし、公演チラシの「劇的で推進力のある音楽作り」という言葉そのものの、目の覚めるような鮮烈な演奏を展開しました。静かで精妙な美しさからハイテンションな激烈さまで表現の幅が広いため、どの瞬間も耳が離せません。一見幸福そうなシーンでも後の悲劇を予感させる暗い音まで巧みにすくい出したり、低弦からデモーニッシュな表現を引き出すなど、オペラ全体の読み込みと表現の深さも特筆ものです。

 ドラマを完璧に作り出す指揮に乗って、豪華歌手陣も最高の歌唱と演技を披露し、贅沢な声の饗宴となりました。《カヴァレリア》では、ルクレシア・ガルシアのサントゥッツァとヴァルテル・フラッカーロのトゥリッドゥが全開の力感でお互いの感情をぶつけあい、迫力の名場面を実現。《道化師》ではグスターヴォ・ポルタのカニオが不器用な中年男の悲哀を歌えば、ラケーレ・スターニシのネッダは自由を求める魅力的な女性を演じ、与那城敬のシルヴィオも吉田浩之のペッペも主役と全く遜色ない名唱で存在感を発揮しました。なかでもヴィットリオ・ヴィテッリのトニオは冒頭の前口上からみごとな歌唱で、劇中から最後のセリフまで舞台を引き締めました。

 ベルギーの演出家ジルベール・デフロの新制作の舞台は、正統派と言える美しいもので、わかりにくい読み替えはありません。《道化師》終結の有名な「喜劇は終わりました」というセリフは、主役のカニオが言う上演が多いのですが、今回はト書き通りにトニオのセリフになっていることからも、デフロが元々のストーリーや音楽を尊重していることが伺えます。なお、デフロはインタビューで演出プランをこのように語っています。

「かつてシチリアには美しいギリシャ劇場が多くあり、今回はギリシャ劇場の遺跡を舞台にしています。舞台の設定は1900年で、現代に置き換えず当時の衣装を使います。ギリシア悲劇において運命を決めるのは神ですが、これらのオペラでは貧しい人々の感情になっています。1900年南イタリアのメロドラマが、古代ギリシャから繋がっていることをお見せしたい。また、カニオのサーカス団がギリシャ劇場にやってくることで、道化と悲劇的な空間のコントラストは非常に強いものになります」

 神々や貴族の話ではなく、一般大衆のリアルな生活を切り取ったヴェリズモ・オペラの2大名作。激情に駆られるあまり殺人まで起こしてしまうという人間の“業”まで、今回の上演では余すところなく表現しつくし、否が応でもドラマの世界にひきずりこまれます。「血湧き肉躍るオペラ体験をしたい」という人にとっては必見の舞台です。

(文:M.Hayashi 撮影:寺司正彦/提供:新国立劇場)
 
■《カヴァレリア・ルスティカーナ》より


 
■《道化師》より


 
■新国立劇場 オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」演出 ジルベール・デフロ インタビュー

■オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 新国立劇場2014年5月公演

■オペラ「道化師」より 新国立劇場2014年5月公演

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新国立劇場 2013/2014シーズン
新制作《カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師》
【イタリア語上演/日本語字幕付】

2014年5/14(水)19:00、17(土)14:00、21(水)19:00、24(土)14:00、27(火)14:00、30(金)14:00
新国立劇場 オペラ劇場
予定上演時間:約3時間10分(休憩含む)

■指揮:レナート・パルンボ
■演出:ジルベール・デフロ

■キャスト
<カヴァレリア・ルスティカーナ>
【サントゥッツァ】ルクレシア・ガルシア
【ローラ】谷口睦美
【トゥリッドゥ】ヴァルテル・フラッカーロ
【アルフィオ】成田博之
【ルチア】森山京子

<道化師>
【カニオ】グスターヴォ・ポルタ
【ネッダ】ラケーレ・スターニシ
【トニオ】ヴィットリオ・ヴィテッリ
【ペッペ】吉田浩之
【シルヴィオ】与那城敬

合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

■チケット
S 27,000円 A 21,600円 B 15,120円 C 8,640円 D 5,400円 Z 1,620円
新国立劇場ボックスオフィス
03-5352-9999
ローソンチケット Lコード:32009

●新国立劇場
http://www.nntt.jac.go.jp

●新国立劇場 《カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師》特設サイト
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/cavalleria

2013/2014 Season
New production
May 2014 14-30

[Cavalleria Rusticana]
Music by Pietro Mascagni
Opera in 1 act
Sung in Italian with Japanese supertitles

[I Pagliacci]
Music by Ruggiero Leoncavallo
Opera in 2 acts
Sung in Italian with Japanese supertitles

Opera Palace

Conductor Renato Palumbo
Production Gilbert Deflo
Scenery & Costume Design William Orlandi
Lighting Design Roberto Venturi

■Cast
[Cavalleria Rusticana]

Santuzza Lucrecia Garcia
Lola Taniguchi Mutsumi
Turiddu Walter Fraccaro
Alfio Narita Hiroyuki
Lucia Moriyama Kyoko

[I Pagliacci]
Canio Gustavo Porta
Nedda Rachele Stanisci
Tonio Vittorio Vitelli
Peppe Yoshida Hiroyuki
Silvio Yonashiro Kei

Chorus New National Theatre Chorus
Children Chorus Tokyo FM Boys choir
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra

New National Theatre, Tokyo
Bo,Office
+81-3-5352-9999 (10:00 am-6:00 pm, English available)