本年喜寿を迎えた池辺晋一郎はなおも盛んな創作活動を展開しているが、本アルバムは1980年代から2010年代に書かれた室内楽曲(ソロ曲もあり)を集成、かつ冒頭と末尾にはその編成に収まらない曲を縁取るように配置してシンメトリカルに構成。全8曲中殊に印象深いのは高度な技巧と池辺独特の歌謡性が結び付いた「ストラータⅡ」(フルートソロ)及び「ギターは耐え、そして希望しつづける」(ギターソロ)、そしてソロと弦楽四重奏の融合と対立の妙を聴かせるクラリネット五重奏曲「クインクバランスⅡ」であろう。最後の若書きのタイトル曲はさすがに平明ながらすでに聴かせる。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年10月号より)
【information】
CD『さんごじゅの花 池辺晋一郎 室内楽作品集Ⅲ』
池辺晋一郎:この風の彼方へ、ストラータⅡ、ギターは耐え そして希望しつづける、君は土と河の匂いがする、クインクバランスⅡ、さんごじゅの花 他
ユベール・スダーン(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢
河野紘子(ピアノ) 工藤重典(フルート) 萩康司(ギター) 亀井良信(クラリネット) 小林沙羅(ソプラノ) クァルテット・エクセルシオ
収録:2018年9月、石川県立音楽堂コンサートホール(ライブ) 他
カメラータ・トウキョウ
CMCD-28374 ¥2800+税