美貌のメゾソプラノ、ついに日本初のリサイタル公演が実現
透明感と深みが融け合う声音と、かのグレース・ケリーを想わせる「クール・ビューティ」で世の頂点に立つ大メゾソプラノ、エリーナ・ガランチャ。北国ラトヴィアの出身で世界の五大歌劇場を制覇、バロックからベルカントものまで声のテクニックを鋭く追求する一方で、カルメンやデリラといったフランス・オペラの美悪魔も官能的に歌い上げ、《ばらの騎士》のオクタヴィアンのような男装の麗人役でも人気が高いという、オペラ界の「大スター中の大スター」である。
そのガランチャがこの5月に再来日を果たし、ピアノ伴奏で単独のリサイタルを行うとのこと。いまやキャリアの絶頂期にある彼女を、声楽ファンなら聴き逃すわけにはいかないだろう。大歌手の芸術性に触れる好機として、ぜひ注目してもらいたい。
ちなみに、冷たい美貌を誇るとはいえ、日ごろのガランチャはとてもフレンドリーのよう。何しろ、ソプラノの中村恵理が共演した折、舞台袖でいきなり、ガランチャの側から中村に発声法のちょっとした相談があり、後輩世代の彼女を仰天させたというのだから。でも、そうした率直さも、彼女のキャリアを支える一助なのだろう。5月の曲目は、《カルメン》の〈ハバネラ〉しかまだ発表されていないが、大悲劇から軽妙なコメディまでこなし、サルスエラの名アリアも好んで歌うガランチャだけに、幅広い選曲が期待できそうである。歌声と所作が放つ「本物の美」を、目でも耳でも堪能してもらいたい。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2020年1月号より)
2020.5/27(水)18:30 愛知県芸術劇場 コンサートホール
問:中京テレビ事業チケットセンター052-320-9933
http://www.e-get.tv
2020.5/28(木)19:00 すみだトリフォニーホール (追加公演) ※5/23は完売
問:テイト・チケットセンター03-6379-3144
http://www.tate.jp