クリストフ・ルセ(チェンバロ) & パリの仲間たち

麗しきロココの真髄を伝える夜会


 古楽界を代表する鍵盤楽器の名手、かつ指揮者として埋もれた18世紀オペラを蘇演するなど大活躍するクリストフ・ルセ。今や“フランス芸術の正統的継承者”と目させる巨匠だ。7年ぶりの来日となる今回は、2人のヴィオラ・ダ・ガンバ (ヴィオール) の名手と共に、絶対王政下で実を結んだ「究極のフレンチ・バロック」を紡ぎ上げる。

 ルセは1983年、ブルージュ国際古楽コンクール・チェンバロ部門で優勝。ソリストとして活躍する一方、91年に自身のアンサンブル「レ・タラン・リリク」を創設。指揮と通奏低音を担い、知られざる作品の開拓にも力を注ぎ、鮮烈な快演を連発。今回の来日は、チェロとガンバの遣い手として、欧州で活躍する盟友・酒井淳からの提案で実現した。

 特集するのは、マラン・マレ(1656〜1728)の作品。生没年すら不詳という謎の名手サント=コロンブにヴィオールを学んだ彼は、“太陽王”ことルイ14世の宮廷ヴィオール奏者として、ヴェルサイユでの音楽の寵児に。1990年の仏映画『めぐり逢う朝』では、師コロンブとの確執が虚実を交えつつ、繊細に描かれていた。

 ステージでは、酒井と、もう1人のガンバの名手マリオン・マルティノと共演。大バッハが「マタイ受難曲」第1曲の旋律の着想を得た「メリトン氏へのトンボー」をはじめ、「シャコンヌ ト長調」や2つの組曲からの抜粋など、マレの佳品のエッセンスを。さらに、ルセは、マレのライバルだったアントワーヌ・フォルクレの息子ジャン=バティストが、父のヴィオール作品を編曲した「クラヴサン曲集」からの独奏曲を添える。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年10月号より)

2019.10/16(水)19:00 ヤマハホール
問:MCSヤング・アーティスツ03-3473-2880 
https://mcsya.org/

他公演
2019.10/17(木)フィリアホール(045-982-9999)
10/20(日)宗次ホール(052-265-1718)
10/23(水)あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール(KCMチケットサービス0570-00-8255)