岡崎耕治(ファゴット)& 山田知史(コントラファゴット)

新鮮な魅力に溢れるユニークな低音楽器デュオ

左:岡崎耕治 右:山田知史
C)Yasuhisa Yoneda

 日本のファゴット界の第一人者・岡崎耕治と、その門下生でもある山田知史のコントラファゴットによるデュオのCDがリリースされた。昨年に続く二人の第2弾。

 この2つの楽器の二重奏自体、聴いたことのある人はきっとかなり少ないと思うのだけれど、なんとなく、コントラファゴットの通奏低音的な下支えの上で歌うファゴット、という図式を想像しがちではないだろうか。しかし彼らのデュオはそれとはかなりちがう。ファゴットとコントラファゴットが丁々発止と渡り合う、一対一の二重奏なのだ。じつに新鮮。そして楽しい!

岡崎「山田君だからできるんです。コントラファゴットをこれだけ吹ける人はそんなにいない。かつてはオーケストラのセカンド奏者が受け持つ楽器でしたが、最近のヨーロッパのトップ・オーケストラには、ソロ・コントラファゴット奏者として契約している人もいます。そういう人に学んで、日本にも山田君のような優れた奏者が出てきたのです」

山田「日本の大学にはまだコントラファゴットの専門の先生はいないので、私も留学して初めて、特殊管への取り組みや、オーケストラでの役割の重要性を知りました。ハーモニーの重厚さを出せた時など、吹いていても鳥肌が立ちます」

岡崎「最初からこのCDを聴いて、ソロとして吹くコントラファゴットのイメージを持てる若い人はしあわせだと思いますね。うまくなって当たり前(笑)。その意味でも反響は大きいし、手前みそでなく、大きな意義があると思っています」

 曲探しは山田の担当。収録曲の大半はこの2本の楽器のためのオリジナル作品だ。

山田「想像していたよりは曲がたくさんあるんです(笑)。この2本を合わせると、音域がかなり広く取れるので、どの曲をやっても響きが豊かになりますね」

岡崎「倍音の関係か、二人で吹くと自分の音がいつもより豊かに感じられて、表現の可能性が広がります。新しいイメージがどんどん湧いてくる。とくに彼のようなうまい人と一緒にやっているとね。別世界に連れて行ってもらえる。もはや師弟関係でもなんでもない。一人の素晴らしい演奏者です」

山田「光栄です。でも、一緒にやっていても、『じゃあこうしたらどう?』といろんな引き出しをお持ちなんです。自分はまだまだ全然足りない」

 「二人のコンサートは?」と訊ねると、顔を見合わせて「大変だよね」と笑う。CD以上に、この2本だけの編成で聴き手を飽きさせない工夫が必要なのだというけれど、この独特のサウンドの面白さと緊張感ある二重奏は、ぜひ生でも体験してみたい。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年10月号より)

CD『ファゴットとコントラファゴットの快楽』
マイスター・ミュージック
MM-4065 ¥3000+税
9/25(水)発売