まぎれもなく“ウィーンのハイドン”だ。歴史的奏法や楽器による温かくも鋭角的な音と、それをまとめて雄大でヒューマンな好演を作り上げているのは、佐渡裕の熱い指揮であることは間違いない。一方で、ウィーンの楽団が“黄金の”楽友協会ホールでウィーン古典派を演奏するときならではの、ローカルだが輝かしい、確信に満ちた響きがするのもまた確か。日本人である佐渡がこの演奏を作り上げたことは、いかに音楽監督として楽団と良好な関係を築き、現地に溶け込んでいるかを物語っている。ドイツの歌手と合唱も、言葉と意味が完全に体に入った自然体の歌唱を聴かせている。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年10月号より)
【information】
CD『ハイドン:天地創造 /佐渡裕&トーンキュンストラー管』
ハイドン:天地創造
佐渡裕(指揮)
クリスティーナ・ランツハマー(ソプラノ)
マクシミリアン・シュミット(テノール)
ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー(バリトン)
RIAS室内合唱団
トーンキュンストラー管弦楽団
収録:2018年9月&10月、ウィーン(ライヴ)
エイベックス・クラシックス
AVCL25994〜5(2枚組) ¥3000+税