千住真理子(ヴァイオリン) アマデウスに恋して

名器「デュランティ」と紡ぐモーツァルトの深き音色

 ヴァイオリニストの千住真理子は、幼いころからモーツァルトに恋心を抱き、やがてさまざまな作品を演奏するようになってさらにこの作曲家の天才性に魅せられ、昨年から「アマデウスに恋して」と題するヴァイオリン協奏曲全曲演奏会を行っている。

 今回は、フランス風の様式が全面にちりばめられたヴァイオリン協奏曲第2番、完璧なる形式美が確立された傑作と称されるヴァイオリン協奏曲第3番、そしてヴィオラを愛したモーツァルトが書いた、深い哀しみとかろやかな舞曲が混在するヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲が演奏される。共演はN響メンバーと仲間たち、さらにヴィオラのソロは千住が共演を熱望した川本嘉子が担当し、熱き演奏を生み出す。

 千住の使用楽器は、世界的に有名なイタリア・クレモナの弦楽器製作家アントニオ・ストラディヴァリの全盛期に作られたという1716年製「デュランティ」。100年以上眠っていたといわれる「幻の名器」で、2002年に千住の所有するところとなった。ストラディヴァリ製作のヴァイオリンは1台ごとにドラマがあり、音色も形状も個性的。「デュランティ」を手に入れたときからモーツァルトを弾いてみたいと思ったと語る千住。いまようやく音が熟成し、自分の音楽を奏でることができるようになり、モーツァルトと真摯に対峙している。その深く熱くドラマを秘めた弦の響きを存分に堪能したい。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年8月号より)

千住真理子(ヴァイオリン) アマデウスに恋して
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会 Vol.2(全2回)
2019.9/24(火)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp/