ある楽器がピアノの音に対して四分音をぶつけると、なぜか本来調律が固定されているはずのピアノの音が狂ったように「ずれて」聴こえる。この現象の追求のため山本裕之がベリオの「セクエンツァ」シリーズよろしく様々な楽器を用いて不定期な連作としたのが「輪郭主義」。実際、これを聴くと相当にたまげる。楽器によってその“狂い具合”に差異があるように聴こえるが、とりわけトロンボーンによる「輪郭主義Ⅲ」にそれが顕著に聴き取れるように感じる。なぜ斯様な事態が発生するのかは山本自身も未だ判らないとライナーで書いているが、ともあれこの作品群は実に面白い。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年6月号より)
【Information】
CD『山本裕之作品集 輪郭主義』
山本裕之:輪郭主義Ⅰ〜Ⅶ、輪郭主義・ミニ
藤田朗子 中村和枝 及川夕美 内本久美(以上ピアノ)
橋本晋哉(テューバ) 加藤訓子(ヴィブラフォン) 村田厚生(トロンボーン) 佐藤まどか(ヴァイオリン)
多久潤一朗 ジョヴァンニ・マレッジーニ(以上フルート) 松本卓以(チェロ) 原田綾子(クラリネット)
鈴木生子(バス・クラリネット) 他
コジマ録音
ALCD-121 ¥2800+税