ベートーヴェンと現代作品がノットのタクトで交錯する
音楽監督ジョナサン・ノットが登場する5月の東京交響楽団東京オペラシティシリーズは、現代音楽とベートーヴェンを組み合わせたプログラム。
ノットは2000年から3年間にわたり現代音楽の専門団体アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めたが、世界最先端を走るこのグループを創設したのが、作曲家=指揮者として活躍したピエール・ブーレーズ。彼の「メモリアル」で演奏会を始めるのは、3年前に没したこの巨匠を追悼するためであろう。フルート独奏とホルン、弦楽器が繊細に絡み合う「メモリアル」は度重なる加筆・改訂を経て、管弦楽と電子音が協奏するブーレーズの代表作「…爆発的−固定的…オリジナル」へと発展していく。その点でも重要な作品だ。フルート独奏は東響首席奏者の相澤政宏。
実質的にチェロ協奏曲であるヤン・ロビンの「クォーク」(16年初演)は、ミクロな世界の響きが宇宙空間のように広がり聴き手を包む。ロビンもまたアンサンブル・アンテルコンタンポランを傘下に持つIRCAMで学んだ。初演を務めた同アンサンブルのチェロ奏者エリック・マリア・クテュリエが、特殊奏法が続出する独奏パートを担う。ノットのフレンチ・コネクションが実現した“今、一押し”の逸品だ。
後半はベートーヴェンの交響曲第7番。すでに5、6、3、4番を演奏、年末には「第九」も予定されるなど、ノットと東響はベートーヴェンを着実に制覇しつつある。ところでベートーヴェンこそ作品ごとに革新をもたらした作曲家。現代の作品によって研ぎ澄まされた感性で接すれば、リズム主題を執拗に繰り返す「第7」の先鋭性にも気づかされるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年4月号より)
東京オペラシティシリーズ 第109回
2019.5/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/