チョン・キョンファ(ヴァイオリン) 70th Anniversary リサイタル

ヴァイオリン・ソナタに聴く進化と深化

C)Simon Fowler
 チョン・キョンファがケガから復帰し、久しぶりに来日したのは2013年6月のことだった。この15年ぶりのリサイタルは絶賛され、以後定期的に来日公演を行っている。今回のデュオのパートナーは長年コンビを組んでいるケヴィン・ケナー。15年4月以来の再演で、魅力的なプログラムが組まれている。
「ヴァイオリンとピアノのデュオというのは、とても難しい。両楽器が完全にひとつの“声”にならないと良い演奏は生まれないからです。ブラームス(第1番)とフォーレ(同)そしてフランク、いずれのヴァイオリン・ソナタもふたりの音が完璧に融合しなければ、聴き手に感動を与える演奏にはなりません」
 こう語るキョンファはヴァイオリン・ソナタを演奏する際、ひとつの目標がある。彼女はジュリアード音楽院でイヴァン・ガラミアンに師事しているが、ガラミアンのパリ時代の弟子で、のちにキョンファも教えを受けるロシア系アメリカ人のヴァイオリニスト、ポール・マカノウィツキーとアメリカ人のピアニスト、ノエル・リーとのデュオに心惹かれ、その演奏を夢見ているのである。彼女はケナーにも彼らの演奏を聴いてほしいと願い、古い録音を探した。もちろんケナーもその演奏に魅せられ、ふたりの目指すゴールは決まった。
 3年前のケナーとのデュオは見事に息の合ったものだったが、ふたりは日々の練習の積み重ねでようやく現在の状況になったのだという。その進化と深化を味わいたい。もちろんキョンファの「シャコンヌ」も聴き逃せない。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2018年6月号より)

2018.6/5(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:サンライズプロモーション東京0570-00-3337 
http://sunrisetokyo.com/