独創的な演出で生まれ変わるイヨネスコの傑作
演出家エマニュエル・ドゥマルシー=モタ率いるパリ市立劇場が、ニューヨーク、ロンドンはじめ世界各国で話題を呼んだ『犀』の日本初演を行なう。父は劇作家・演出家、母は女優という環境に育ったモタは、30代前半の若さでランス国立演劇センターの芸術監督に就任。2008年からパリ市立劇場の芸術監督を務め、11年より国際芸術祭「フェスティバル・ドートンヌ」のディレクターも兼任するなど、フランス演劇界の俊英として活躍を続けている。
今回上演する『犀』は、サミュエル・ベケットと並ぶ不条理演劇の旗手ウジェーヌ・イヨネスコの戯曲。人間が次々と“犀”に変身、遂には街中が“犀”に埋め尽くされてゆく――。第二次世界大戦前のファシストの台頭に刺激を受けて書かれ、一世を風靡した作品ながら、その後フランスでもあまり取り上げられなかったそうだが、モタは戯曲の“音”と“身体性”に着目、“言葉”とも添わせることで、ダンス作品にも通じる洗練された動きの舞台を創り出した。また、具体的に姿を現す演出が多い“犀”を敢えて舞台に登場させないことで、例えばウイルスの蔓延といった“目に見えない恐怖”をも描き、作品に現代的な意味合いを吹き込むことに成功している。「イヨネスコは現代的な側面をもった作家。世界の観客の前で上演してきたことで、文化圏によって異なる笑いなどについても学び、取り入れることができた」とモタ。見逃せない舞台がいよいよ日本上陸する。
文:藤本真由
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)
11/21(土)〜11/23(月・祝) 彩の国さいたま芸術劇場
問:F/Tチケットセンター03-5961-5209
http://www.festival-tokyo.jp
彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp