第19回ショパンコンクール最年少入賞者、待望の初来日――リュー・テンヤオが生の舞台でみせた素顔とは⁉|公演レポート

 昨年一大ムーブメントを巻き起こしたショパンコンクールの入賞者たちが、続々と日本でコンサートを開催! この夏は、7月にリサイタルを行ったマレーシアの鬼才 ヴィンセント・オンに続き、最年少入賞者として大きな話題を呼んだリュー・テンヤオが待望の初来日。サントリーホールで二夜にわたるコンサートを行いました。
 コンクール時、画面の向こうで大舞台に臨んでいたピアニストが、およそ1年の時を経た今、日本のステージの上でどのような輝きを見せたのか? この記事では、8月12日に行われた「リュー・テンヤオ オール・ショパン協奏曲」公演の様子をお届けします。

文:寺西基之

リュー・テンヤオ ©Atsushi Yokota

 昨年(2025年)の第19回ショパン国際ピアノコンクールで桑原志織とともに第4位に輝いた中国のリュー・テンヤオ。コンクール時からネットでも特に人気が高かったリューだが(その時はリュウ・ティエンヤオという表記が使われていたので、その名で記憶している人も多いだろう)、この第19回の入賞者のうち、最年少(当時16歳)の彼女だけがこれまでコンクール後の来日機会がなかった。その彼女が8月についに来日、ショパン・プロを披露した。この記事で取り上げるのは東京・サントリーホールでの初日の公演で、待ち望まれていた演奏会だけに客の入りも上々、開演前から華やいだ雰囲気が会場に広がる。曲はショパンの2曲のピアノ協奏曲で、共演はウカシュ・ボロヴィチが指揮するN響メンバーによるオーケストラ、使用ピアノはファツィオリである。

©Atsushi Yokota

 プログラムは「ピアノ協奏曲第2番」から始まった。青春の憂いが全編に漂うこの作品に同化するかのように、リューは共感をもって音を紡ぎ出していく。かなり極端なくらいにテンポを揺らしていくが、それが感情の流れの推移に即しているので、まったく人為的なものとならない。むしろそこに内面から本然的に音楽が湧き出してくるような自然さを感じさせる点に彼女のただならぬ才が窺える。

 そうしたリューの美質はプログラム後半の「ピアノ協奏曲第1番」でいっそう鮮やかに発揮された。コンクールの本選でも彼女はこの第1番を弾いており、しかも最優秀協奏曲賞も受賞するほどその演奏が高く評価された。今回もまさに曲を完全に自分の血肉としているかのような演奏ぶりで、豊かな音色の変化、タッチの多彩さ、緩急自在なテンポをとおして、作品のうちに交錯する若きショパンの情熱、叙情、憧憬を生き生きと表し出していた。

©Atsushi Yokota

 とにかくリューの弾くショパンはどこをとっても溢れんばかりの感興が息づいており、演奏姿からも心身ともに作品の世界に入り込んでいることが伝わってくる。同じことはコンクール時のネット配信からも感じられたが、やはり実際に会場で聴く生の実演では同じ空間のうちに演奏の息づかいが直に届いてくるので、彼女の魅力がよりリアルに実感される。音楽を奏でる喜びが客席に伝播し、聴衆はたちどころに彼女の世界へと引き込まれていくといった感じで、ホール全体が一体感に包まれた幸せな時間を体験できた。

 この日のアンコールはショパンの「ノクターン 嬰ハ短調」、王立平の「小奏鳴曲(小ソナタ)」の第2・3楽章、ショパンの「子守歌」の3曲で、とりわけたゆたうリズムに乗って美しく歌われた「子守歌」にリューの類い稀な資質が表れていた。見た目こそまだ少女っぽさが残る彼女だが、舞台マナーやおじぎなどの身のこなしは自然で嫌みがなく立派だし、聴衆やオケにもきちんと気を配っているところにとても好感がもてる。そうした面でも人を惹きつける天性のアーティストで、これから芸術家としてどのように成長していくのか、目が離せない。

©Atsushi Yokota

写真提供:テンポプリモ

【Concert Information】

リュー・テンヤオ
オール・ショパン[協奏曲]
2026.8/12(水)19:00 サントリーホール

共演
指揮:ウカシュ・ボロヴィチ
N響メンバーによるオーケストラ

曲目
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 op.21、ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
[アンコール]
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 KK.IVa/16
王立平:小奏鳴曲 第2・3楽章
ショパン:子守歌 変ニ長調 op.57

テンポプリモ
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