
創立70周年を迎える日本フィルハーモニー交響楽団の歴史上、誰よりも重要な指揮者は、創立指揮者の渡邉曉雄(1919〜1990)だ。初代の常任指揮者として楽団の創設と育成に尽力し、さらに日本フィルが自主運営で再出発した激動の時期にも、再び常任指揮者や音楽監督を務めて活動を支えた。
藤岡幸夫は、この渡邉の最後の愛弟子にあたる。それもあって、藤岡も日本フィルとの縁が深い。プロとしての第一歩は日本フィルの指揮研究員への登用であり、英国留学を経て日本で指揮者デビューを飾ったのも、このオーケストラの定期演奏会だった。こうした関係から、日本フィルが創立70周年の記念年に渡邉曉雄の業績を偲ぶコンサートの指揮者として、藤岡ほどふさわしい存在はないといえる。
5月の16日(東京芸術劇場)と17日(サントリーホール)の2日間にわたって行われるコンサートでは、「交響三題!」と題して、日本フィルとゆかりの深い名曲が一挙に演奏される。渡邉の十八番だったシベリウスの作品から、交響詩「フィンランディア」。そして日本フィルが歴代の名指揮者たちとともに演奏を重ね、節目を彩る重要な作品となってきた、チャイコフスキーの交響曲第5番とベルリオーズの幻想交響曲、以上の3曲だ。
渡邉のダンディな指揮ぶりを受け継ぎ、この3曲に藤岡が注ぎ込む情熱の炎が、日本フィルの歴史と未来を明るく照らすことだろう。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ2026年5月号より)
藤岡幸夫(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団
第262回 芸劇シリーズ
2026.5/16(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第413回 名曲コンサート
2026.5/17(日)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp

山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki
1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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