INTERVIEW 山本祐ノ介(指揮/編曲)
-父・直純ゆずりのエンターテイナーが魅せる、映画音楽&ポップス名曲集

山本祐ノ介

 7月4日に東京芸術劇場で行われる「永遠のポップス名曲コンサート」で、指揮と編曲、トークを担う山本祐ノ介。近年話題となった映画をテーマとしたコンサートも増えているが、この公演では、マンシーニやモリコーネらによる往年の映画音楽や、ルフェーブルやモーリアなどのポップス・オーケストラならではの魅力に改めて光が当たりそうだ。山本自身、そこに面白さを感じているという。

 「もちろん新しいものが悪いということではないんです。でも昔の映画音楽は人が演奏することを前提に、シンフォニックな工夫が凝らされている。だからオーケストラ本来の魅力を感じていただけるような曲は、古いほうが多いんですよ。もうひとつ重要なのが懐の深さ! いい意味でルールがないですよね(笑)。クラシカルな流れもあれば、アメリカで生まれたジャズやロックを使うこともある。そういうところが映画音楽の面白さだと思うのです。今回のようなプログラムでどうやってその味を出すかは、ミュージシャン一人ひとりの腕の見せどころですし、やりがいがあるなと感じています」

 編曲と演奏、どちらも担う山本は、原曲の持ち味を損なうことなく、どうすれば生演奏のオーケストラが魅力的に立ち上がるか、そのさじ加減にこだわっている。

 「完全なコピーはできないんです。特に当時の録音だからこそ醸し出される雰囲気もありますからね。それを今の自分たちの持っているリソースの中で、いかに魅力的にお伝えできるか? せっかく大編成のオーケストラによる演奏なので、その良さをどう活かすかを考えて編曲を進めています」 

 指揮する上では、映画本編で流れた音が基準になりやすいジャンルだからこその難しさを認識しつつも、生演奏独自の魅力が発揮できると山本は自信をもっている。

 「クラシックの面白いところって、同じ曲でも演奏者や指揮者、オーケストラによって違ってくることだと思うんです。今回取り上げる『スター・ウォーズ』だって、レコーディング通りに演奏するとは限らない。もちろん、イメージを壊さないようにしなければいけない難しさはありますけどね。お客さんにも、“今日はどういう『スター・ウォーズ』をやるんだろう”という楽しみ方をしてもらえれば嬉しいですね!」 

 その根底にあるのは、観客へのまっすぐな眼差しだ。父・山本直純の言葉にも触れながら、山本はこう話してくれた。

 「父がよく“音楽は大衆のためにある”と言っていました。クラシックだろうがポップスだろうが映画音楽だろうが、来てくださったお客さんに“面白いな、また来たいな”と思ってもらいたい。僕もそうあるべきだと信じています」 

 その言葉どおりのひとときがこの夏、期待できそうだ。

取材・文:小室敬幸

(ぶらあぼ2026年6月号より)

夏の午後に贈る 永遠のポップス名曲コンサート
2026.7/4(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:ムジカキアラ 03-6431-8186
https://www.musicachiara.com


小室敬幸 Takayuki Komuro

1986年、茨城県出身。東京音楽大学で作曲を学んだ後、同大学院では音楽学を専攻。修了後は大学の助手と非常勤講師を経て、現在は音楽ライター。クラシック音楽、現代音楽、ジャズ、映画音楽を中心に演奏会やCDの曲目解説、雑誌やWEBメディアにインタビュー記事を執筆。また、現在進行形のジャズを紹介するMOOK『Jazz The New Chapter』にも寄稿している。共著に『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』『ピアノへの旅』。