スペインの名曲から武満、坂本龍一まで、村治佳織が趣の異なるテーマで響かせる至福の調べ

左より:村治佳織 ©Sayaka HIKIDA/加藤昌則/上妻宏光

 生活のリズムを少しゆるめて音楽に身をゆだねたい。そんな気分にこたえてくれる、第一生命ホールの「ごほうびクラシック」。村治佳織は、第1回から繰り返し出演し、このシリーズを支えてきた。ギターのやわらかな響きと、上質な音楽を親しみやすく届ける彼女の佇まいが、企画のコンセプトにぴったり重なる。

 昼の部「スペインと日本」では、ギター音楽に欠かせないスペインの名曲が並ぶ。「アルハンブラの思い出」は、翳りを宿したトレモロが印象的な、ギター音楽の代名詞のような一曲。「アランフェス協奏曲」は、作曲家・加藤昌則との共演によるピアノ編曲版で、名旋律の美しさがより身近に味わえるはず。さらに三味線の上妻宏光を迎え、スペインと日本の異なる文化が自然に響き合う。

 夕方の部「日本の作曲家の作品を集めて」はギター独奏によるソロ・プログラム。武満徹、坂本龍一から、久石譲、植松伸夫、渡辺香津美まで、邦人作品を多様な角度で取り上げる。今年は武満徹没後30年。ギターを愛し、その繊細な響きに託した作曲家の深い詩情が、「すべては薄明のなかで」やビートルズ「イエスタデイ」(武満徹編)ににじむ。映像や物語と結びついて親しまれてきた作品も、ギター独奏ならではのこまやかな陰影を帯びて新たな表情を見せるだろう。

 それぞれ趣の異なる昼夕2公演。音に耳を澄ますうちに、私たちの心は自然とほどける。日常の中にそっと差し込まれる、音楽のごほうび。

文:宮本 明

(ぶらあぼ2026年3月号より)

ごほうびクラシック 第17回 村治佳織 ギター・リサイタル
「スペインと日本〜ロドリーゴ生誕125周年〜」 

2026.5/16(土)13:30
「日本の作曲家の作品を集めて」 
2026.5/16(土)16:00
第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
https://www.triton-arts.net

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