
ニューイヤー・コンサートといえばウィンナワルツとポルカ。そこにひとひねりを加えたのが、神戸市室内管弦楽団の「変な!?ニューイヤーコンサート」だ。第21回ハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門で第2位を獲得した大井駿の指揮とピアノにより、凝りに凝ったプログラムを披露する。
ヨハン・シュトラウスⅡ世の「皇帝円舞曲」は数あるウィンナワルツのなかでも、もっとも人気の高い作品のひとつだろう。これを小編成のアンサンブル用に編曲したのがシェーンベルク。大枠は原曲に忠実ながらも、この編曲者ならではのスパイスが効いている。さらにシェーンベルクの知られざる初期作品「弦楽のためのワルツ」からも。
生誕150年を迎えるファリャの作品からは「火祭りの踊り」を作曲者編曲の弦楽とピアノ版で。お正月らしからぬエキゾチックなダンスの音楽だ。没後30年の武満徹による映画『他人の顔』の「ワルツ」も気の利いた選曲。ワルツといっても華やかではなく、しんみりと切ない。
ヨハンとヨーゼフの兄弟合作による「ピツィカート・ポルカ」は弦楽器のピツィカートだけで演奏される楽しい作品だ。そしてニューイヤーとは「シュトラウス違い」のリヒャルト・シュトラウスからも一曲。歌劇《カプリッチョ》から精緻な弦楽六重奏曲が演奏される。
おしまいはYouTubeやSNSでも注目を集める奇才、松﨑国生の委嘱新作「ワ・ワ・ワルツ」。きっとウィットに富んだぶっ飛んだワルツを聴けるはず。ほかでは聴けないユニークなニューイヤー・コンサートを楽しみたい。
文:飯尾洋一
神戸市室内管弦楽団
Selection Vol.8「変な⁉ニューイヤーコンサート」
2026.1/10(土)14:00 神戸/長田区文化センター別館 ピフレホール
出演
大井駿(指揮・ピアノ)
神戸市室内管弦楽団
プログラム
ヨハン・シュトラウスⅡ世/シェーンベルク:皇帝円舞曲
シェーンベルク:弦楽のためのワルツより「第5番 Rasch」「第9番 Lebhaft」
ファリャ:バレエ音楽《恋は魔術師》より〈火祭りの踊り〉(弦楽とピアノ版)
武満徹:「3つの映画音楽」より〈ワルツ〉(映画『他人の顔』より)
ヨハン・シュトラウスⅡ世&ヨーゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
リヒャルト・シュトラウス:歌劇《カプリッチョ》より弦楽六重奏曲
松﨑国生:ワ・ワ・ワルツ(委嘱作品、世界初演)
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349
https://www.kobe-ensou.jp

飯尾洋一 Yoichi Iio
音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/


