クラシック、ジャズ、ポップスに作曲も!
才能あふれる名手が120%で臨む、年に一度のリサイタル
INTERVIEW 中ヒデヒト(クラリネット)

©︎MIKA INOUE

取材・文:編集部

 故・小澤征爾にその実力を認められ2009年からサイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団に参加。一方、スタジオミュージシャンとしては、日本を代表する作曲家たちの指名を受け、TV、映画、CM、NHKの朝ドラなどの作品の録音に携わる。まさに二刀流として活躍するクラリネット奏者の中ヒデヒト。クラシックにおけるレパートリーは、古典・ロマン派から現代音楽まで、さらにジャズまでも吹きこなすその実力は三刀流とも四刀流とも言えるだろう。その彼が毎年2月に開催しているリサイタルがある。昨年は、生音とあらかじめ録音しておいたパートをエレクトロニクスによって共演させるという、ピエール・ブーレーズの「二つの影の対話」という難曲を披露。今年のテーマは、「原点回帰 自分のルーツを探る」

「初心に戻り、僕の人生に影響を与えてくれた人や曲から自身のルーツを探ろうと思います。まず最初の曲に、恩師 村井祐児先生が自身のリサイタルのために川島素晴先生に委嘱した『自分の影との対話』を選びました。アクションミュージックという視覚的要素も伴う作品で、村井先生とも3回共演していますが、今回は、同門の金子平くんと演奏します」

 金子は現在、読売日本交響楽団の首席クラリネット奏者を務める。中が東京藝大の2年になったときに入学してきた後輩にあたる。演奏のスタイルは異なる二人だが、同じアカデミーに参加し、寝食をともにして練習を重ねたまさに自身の“ルーツ”のひとりと呼べる音楽家だ。また、同日の午前中には、「土曜日の音楽会・ゼロ歳」という、0歳児から入場できる本格的なコンサートもあり、そこでもこの曲を演奏するという。子ども向けの演奏会でも「入門編はやりません。『聴く力』を信じているから」と中は反応が楽しみでならない様子。

 2曲目も続けて金子とプーランクの「2つのクラリネットのためのソナタ」を演奏する。昨年10月、中の故郷である京都府京丹波で、憧れの世界的奏者ポール・メイエとも共演を果たした特別な作品だ。

 後半には作曲もこなす中の新曲が披露される。

「毎年、新曲を披露することにしていますが、今年はクラリネットとスネアドラムによる作品です。共演は、パーカッション奏者の山本貢大さん。彼とはかつて同じ編成の『六段の調』を演奏したことがあります。笛と太鼓というすべてを削ぎ落としたような原始的なサウンドから、和音が感じられたり倍音が聞こえてくるような研ぎ澄まされた感覚をお客さまと共有したいです」

 “五感で感じる”というのも中のリサイタルの重要なコンセプト。ステージには植物のインスタレーションが設られたり、アロマオイルによる香りの演出もあり、音楽をさまざまな感覚で受け止める配慮がなされている。

「このリサイタルは、今の自分がなにを感じてなにを伝えたいかを突き詰めて表現する、自分にとって大切な場所。お客様に楽しんで帰っていただけるよう様々なアイデアを盛り込んで全力で準備しています。コンサートの余韻で日常が豊かになりますように」

2024年公演の様子 ©︎Koji HIRANO

【Information】

中ヒデヒト クラリネットリサイタル2025
〜原点回帰 自分のルーツを探る〜

2025.2/16(日)17:00 ムジカーザ


出演
中ヒデヒト(クラリネット、作編曲)
金子平(クラリネット)
山本貢大(スネアドラム)

プログラム
川島素晴:自分の影との対話
プーランク:2つのクラリネットのためのソナタ
ジャレル:M.P. / P.M. (Nachlese IIB) 2つのクラリネットのための
ジヴコヴィッチ:ペッツォ・ダ・コンチェルト
中ヒデヒト:Le rond -point クラリネットとスネアドラムのための *新曲
ほか

土曜日の音楽会・ゼロ歳 vol.18
2025.2/16(日)11:30 ムジカーザ

出演
中ヒデヒト(クラリネット)
金子平(クラリネット)
山本貢大(スネアドラム)
春田傑(クラリネット)
山本優真・10歳(ヴァイオリン)

プログラム
自分の影との対話/川島素晴
スネアドラムソロ
ディヴェルトメント/モーツァルト 
ほか

問:nakahidehito.concert@gmail.com
https://nakahidehito.shop