アニバーサリーには“2大B”がふさわしい
「オーケストラとして、サウンドが充実してきたと思います」
創立25周年を迎えた東京ニューシティ管弦楽団の正指揮者・曽我大介は言う。2006年から首席指揮者や首席客演も務めていたので、すでに両者の関係は深い。節目の今シーズンには、ブラームスの交響曲をメインにベートーヴェンの序曲を組み合わせる4回のツィクルスを組んだ。題して『2人のB』。
「スタンダードにガッツリと取り組もう、というのがこの企画です。ブラームスは、いつか必ず正面から向き合うべきレパートリーで、曲自体が非常にプロフェッショナルな書き方ですし、構造がしっかりしていて音の積み上げ方の完成度が高い。逆にいえば、それを確認しながら演奏すれば魅力が倍増します。ベートーヴェンの序曲も同じで、オーケストラのすべてが詰まっている気がします」
曽我が振るのは交響曲第1番と「プロメテウスの創造物」抜粋。第2番と《フィデリオ》序曲が楽団の客演指揮者アンドレイ・アニハーノフ(11/14)、第3番と「レオノーレ」序曲第3番が現田茂夫(2016/1/23)、第4番と「エグモント」序曲が秋山和慶(2016/3/19)。と、4人の指揮者が交響曲4曲を振り分けるというのも面白いポイントだろう。
「それぞれの個性が対比されて絶対面白いと思うんですよ。特に秋山先生の第4番! どの回も聴きたいです」
自身が振る第1番について。
「1番はオーケストラとしてのサウンドを聴かせたい曲ですね。『やったぜ!』みたいな会心のサウンドがオーケストラから自発的に出てくるよう腐心したいと思います。サントリーホールのオープニング・シリーズで小澤先生が振りましたよね。他にもアバドとかサヴァリッシュとか。昔あこがれの巨匠たちで聴いた曲を、やっと出来る番がきました。ブラームスは全部好きなんです。心中してもいいぐらい(笑)」
『二人のB』以外の協奏曲も加わる。曽我が選んだのは川久保賜紀を迎えてのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。
「ベートーヴェンで始まって、ロマン派の出口まで行きたいなと。アルマ・マーラーに捧げられた素晴らしい名曲です」
各回に、曽我の命名による四文字熟語の副題が添えられている。自身の回は「音吐朗々」だ。
「ブラームスの終楽章、クララに捧げた例のホルンの旋律を聴くと、この言葉しか思い浮かびません」
ちなみに他の回は「益者三友」「英姿颯爽」「円熟無礙」。なるほど! 言葉でイメージを広げながら聴きに行きたい。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)
東京ニューシティ管弦楽団 第99回定期演奏会
5/16(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京ニューシティ管弦楽団チケットデスク03-5933-3266
http://tnco.or.jp