藤倉大作曲による音楽劇を、岡田利規率いる演劇カンパニー「チェルフィッチュ」が神戸で上演

ウィーン芸術週間の委嘱によりコラボレーションが実現

岡田利規

写真提供:神戸市民文化振興財団

 演劇作家・岡田利規と作曲家・藤倉大。それぞれの分野を牽引するトップランナー二人がコラボレーションした音楽劇「リビングルームのメタモルフォーシス」が2月、神戸文化ホールで上演される。
 ヨーロッパ最大級の芸術祭・ウィーン芸術週間(Wiener Festwochen)が、岡田の主宰する演劇カンパニー「チェルフィッチュ」に委嘱したことにより生まれた本作。2021年から藤倉とのクリエーションがはじまり、23年5月に世界初演、今年9月には東京芸術劇場で日本初演され話題を呼んだ。
 1973年にオープンした神戸文化ホールは、開館50周年記念事業のひとつとして本作を上演する。これに先駆けて12月20日、同ホール内で行われた記者懇談会に岡田が出席、藤倉はビデオメッセージを寄せた。

右:藤倉大

 岡田によると「リビングルームのメタモルフォーシス」は、「自分の関心事——どうすれば演劇が“人間中心的なもの”を超え、その外側に届けることができるか」に基づいて創った作品だという。
「音楽と演劇がフィフティ・フィフティの関係で、音楽が登場人物の置かれている境遇や心情を彩り増幅させるのではなく、 “人間中心的なもの”の外側にある象徴として存在するような音楽劇を創りたいと思いました。この関係性を視覚的に反映するため、演劇をするステージ上にアンサンブルを配置しました。俳優たちの手前に演奏家が並びます」

 6名の俳優陣が演じるのは、賃貸契約の一方的な破棄によって住む家をいきなり追い出されそうになる家族たち。リビングルームでの会話が進むにつれ、見えない大きな力によって物語は新しい世界へと進んでいく。

東京公演の様子 撮影:前澤秀登
撮影:前澤秀登
撮影:前澤秀登

 演奏家は7名。初演はクラングフォルム・ウィーン、創作段階と日本初演はアンサンブル・ノマドのメンバーが担当したが、神戸公演では地元・神戸市室内管弦楽団メンバーによるアンサンブルが登場する。

 藤倉とのコラボレーションに至った経緯について岡田は「ウィーン芸術週間がパートナーとなる作曲家として藤倉さんを提案してくれました。彼はすでにオペラ作品を書いていますが、新しい舞台作品を創ることへのモチベーションも非常に高かった」と振り返る。

 一方藤倉も、岡田との協働は「演劇の都合で音楽が制約されることもなく、本当に自由に気持ちよく創作できた」という。

 藤倉は神戸市室内管が演奏を務めることについても期待を込めた。
「創作のプロセスに関わっていないアンサンブルが演奏してくださるということにとても新鮮さを感じています。プロジェクトの背景を知らずに楽譜を見て、そこから音楽を読み取って弾いていただくということは、楽譜の力が問われますし作品が試される場面でもあります。ですが、これこそが本当の意味での再演で、作曲家としては一番嬉しく大切なこと。個人的にも意味のある上演になると思っています」


神戸文化ホール 開館50周年記念事業 2024劇場賛歌
チェルフィッチュ × 藤倉大 with 神戸市室内管弦楽団アンサンブル
「リビングルームのメタモルフォーシス」

2025.2/1(土)、2/2(日)各日14:00 神戸文化ホール(中)

作・演出/岡田利規
作曲/藤倉大

出演/青柳いづみ、朝倉千恵子、石倉来輝、川﨑麻里子、矢澤誠、渡邊まな実

演奏/ 神戸市室内管弦楽団アンサンブル
[高木和弘、西尾恵子(以上ヴァイオリン)、亀井宏子(ヴィオラ)、伝田正則(チェロ)、上田希(クラリネット)、赤土仁菜(ファゴット)、法貴彩子(チェレスタ)]

問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349
https://www.kobe-bunka.jp/hall/