日本を代表する音楽家たちが集結する大谷康子 デビュー50周年記念特別コンサート

 2025年にデビュー50周年を迎える大谷康子。1月10日にはサントリーホールで「50周年記念特別公演」を開く。単にヴァイオリンの名曲を集めたコンサートではなく、自身の活動の50年間を振り返りながらも、「戦争の多くなった今こそ、自分に出来ることは何か」という想いも込めた。

©Yukisuke Fushimi

 東京藝術大学附属音楽高等学校の卒業試験で演奏した思い出のラヴェル「ツィガーヌ」(ピアノ/藤井一興)でスタート。大谷が活動のひとつの柱としてきた弦楽四重奏団「クヮトロ・ピアチェーリ」によるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番は「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に捧げる」とされる作品で、メンバーの苅田雅治(チェロ)の師である井上頼豊(シベリア抑留を経験)の思い出に繋がる。 R.シュトラウス「メタモルフォーゼン」は戦争で破壊されていくドイツの街、文化に想いを馳せた23の独奏弦楽器のための作品だ。また、大谷が司会を務めるテレビ番組『おんがく交差点』でも活躍する作曲家・萩森英明への委嘱新作「未来への讃歌(ヴァイオリン協奏曲)」も山田和樹指揮のもと披露されるが、そこには様々な民族楽器が加わる。

 その特別コンサートの後、5月には名手イタマール・ゴランとのブラームス作品を中心としたリサイタル・ツアー(全国13公演)が待っている。大谷が敬愛するブラームスのヴァイオリン・ソナタでは、音楽的に共感を深めるふたりの演奏から、さらなる成熟へ歩み出す彼女の魅力を感じることができるはずだ。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2025年1月号より)

民族・言語・思想の壁を超えて未来に向かう音楽会
デビュー50周年記念特別コンサート 大谷康子
2025.1/10(金)18:30 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp