読響9年ぶりの欧州ツアーが進行中!【速報現地レポート Vol.3】
INTERVIEW 首席トランペット奏者 辻本憲一

協力:読売日本交響楽団

5公演目、ドイツ/ミュールハイム・アン・デア・ルールの会場裏を流れるルール川のほとりで
辻本憲一さん

 首席トランペット奏者の辻本憲一さんに、読響欧州ツアー4公演目となるハンブルク公演を終えた翌19日(現地時間)に、お話を伺いました。

——欧州ツアー8公演のうち4公演を終えました。ここまでの公演の感想を教えてください。

 自分にとって初めての読響の欧州ツアーで、ヴァイグレさんと一緒に演奏できることを嬉しく思います。マエストロとはこれまでオーケストラ単独の演奏会だけでなく、《ばらの騎士》や《タンホイザー》など多くのオペラでも共演してきました。ヴァイグレさんはオペラ作品で表現される情景やドラマ性が体に入っている方なので、シンフォニーでも演奏していて情景が見えてくるように感じます。もともとオーケストラのホルン奏者でいらっしゃったので、呼吸のある音楽づくりにとても安心感があります。今回のツアーはこれまでヴァイグレさんと読響が培ってきたものの成果を披露する機会だと感じています。

ハンブルク/エルプフィルハーモニー公演

——今回のツアー中、心掛けていることや、苦労されていることなどはありますか?

 日本では普段、公演の前にはゆっくりウォーミングアップの時間をとっています。時には途中で食事も挟みながら、本番に向けてじっくり時間をかけて楽器と向き合うようにしています。ただ、ツアー中は長距離の移動が多く、必ずしも普段のように時間が取れるわけではありません。本番に向けてのコンディションづくりは難しいですが、そこは成長に繋がる点だと捉えています。
 それ以外でも、少しでも自分にとってプラスになるような経験を積み重ねていきたいと考えています。ヨーロッパならではの雰囲気を感じることもそのひとつです。日本ではオーケストラが教会で演奏することは非常に少ないですよね。2公演目のフィリンゲン=シュヴェニンゲンの会場はかつて修道院の礼拝堂だったということで、印象に残っています。空間の雰囲気を感じつつ、トランペットという楽器について、また自分の目指したい音について見つめ直す機会にもなりました。それぞれの会場に合った響きと、そこから生まれてくる音楽の表現をいつも大事にしたいと思っています。そして何より、今回のツアーで一番楽しみにしていたのが以前留学していたハンブルクでの公演だったので、エルプフィルハーモニーでの本番は特別なものになりました。

フィリンゲン=シュヴェニンゲンの演奏会場にて
左:ジョナサン・ステファニアクさん(コントラバス)

——ハンブルク留学時代のお話も聞かせてください。

 1997年に東京フィルに入団し、それから3年ほど経った24歳の時に留学しました。オペラの勉強もしたいと思っていたところ、当時ハンブルク国立歌劇場管の首席トランペット奏者で以前からCDなどを聴いてぜひ習ってみたいと強く感じていたマティアス・ヘフスさんが、ちょうど自分が渡独するタイミングでオケを退団してハンブルク音楽大学の教授に就任されることになり、その第1期生として先生のもとで勉強できることになりました。演奏だけでなくお人柄も素晴らしく、それが音楽性にも表れているヘフス先生に師事しながら、ハンブルク国立歌劇場のバンダで演奏する機会や教会の結婚式でのお仕事もいただいてハンブルクで1年間過ごしました。帰国後も、先生が日本にいらっしゃる際や、結婚や子どもが生まれた時など人生の節目のタイミングにも連絡を取って交流は続いていました。

エルプフィルハーモニーにて
左:マティアス・ヘフスさん

——ヘフスさんと今回ハンブルクで再会されていかがでしたか?

 先生は、今回の読響の演奏会をとても楽しみにしてくださって、私たちの演奏を誉めていただき、嬉しかったです。また、公演の前日には現在ヘフス先生に師事している生徒さんたちとの交流とアンサンブルの機会を作っていただきました。先生のどこまでも懐の深いお人柄に本当に感謝しています。実は、ヘフス先生は今回のソリストのクリスティアン・テツラフ(vn)さんと若い頃に同じ楽団で演奏していたそうで、さらに今後ヴァイグレさんとも共演の予定があるそうです。本当にたくさんの偶然やご縁が重なって今回ハンブルクで20年以上ぶりに先生とお会いでき、さらに読響の演奏を聴いていただけたことを大変幸せに感じています。

エルプフィルハーモニーの前で。ヘフスさんと読響トランペットセクション
中央:ヘフスさん 右から二人目:辻本さん

——今後、読響はどのように成長していきたいですか?

 オーケストラというのは、メンバーの入れ替わりや多くの指揮者との共演、各地の演奏会場との出会いなどのさまざまな要素が重なって、渦を巻いて上に向かっていくように成長する組織だと考えています。個々のプレーヤーの技量やパワー、音楽性を最大限に生かそうとするヴァイグレさんの音楽づくりの方向性とも相まって、読響は今とてもいい状態にあると思います。今回のツアーでは、同じ景色を見て、同じ経験を共有するということが大事だと考えています。年齢は関係なく、ひとつのチーム、ひとつのファミリーとして、同じものを目にしてそれぞれが何かを感じ、それらを交えながら演奏すると、言葉では表せない繊細な部分も音楽で共有できるはずです。それぞれが違うことを感じていても、たとえ同じ方向を向いていなくても、交わるべきところでそれを持ち寄れば、きっといい演奏に繋がりますし、楽団としてこれまで以上に成長できると信じています。

ハンブルク公演の後、ヘフスさんと読響金管セクションで
中央左:ヘフスさん 右:辻本さん

——最後に、残りのドイツとイギリスでの4公演について抱負を聞かせてください。

 4公演を経て改めて感じたことですが、演奏を楽しんでくださるお客様はとても大きな存在です。クラシック音楽が世界中で広く親しまれるものになっているとはいえ、日本人が西洋を起源とする歴史的な芸術を披露するために欧州を訪れ、しかも現地のお客様に温かく受け入れていただけるというのは本当にありがたいことですよね。イギリスでは、ロンドンのカドガンホールでは10年以上ぶりに、またそれ以外の2つのホールでは初めて演奏しますが、それぞれの空間の雰囲気を感じながら演奏していきたいです。

読売日本交響楽団 欧州ツアー2024
10月13日(日) ニュルンベルク/マイスタージンガーハレ
10月14日(月) フィリンゲン=シュヴェニンゲン/フランツィスカーナー・コンツェルトハウス
10月16日(水) ベルリン/フィルハーモニー
10月18日(金) ハンブルク/エルプフィルハーモニー
10月20日(日) ミュールハイム・アン・デア・ルール/シュタットハレ
10月22日(火) ベイジングストーク/ジ・アンヴィル
10月23日(水) バーミンガム/シンフォニーホール
10月24日(木) ロンドン/カドガンホール
※日付は現地時間

プレゼントキャンペーン開催中!】

このツアーを記念して作られたオリジナルステッカー(非売品)を10名様にプレゼント!メンバーやスタッフも、実際にこのツアーで楽器ケースやスーツケースに貼って使用しています。奮ってご応募ください!

■プレゼント内容
読売日本交響楽団 欧州ツアー2024
オリジナルステッカー 全3種
読者限定10名様

※カラーは写真と異なる場合があります

出国前の空港にて。
左:葛西修平さん(トロンボーン) 右:大槻健さん(首席コントラバス)

■プレゼント応募

●応募締切:2024年10月31日(木)23:59
 *お預かりした個人情報は本件以外の目的には使用いたしません。
 *当選者の発表はステッカーの送付(メール)をもって代えさせていただきます。
 *送付先は、日本国内のご住所に限らせていただきます。

読売日本交響楽団
https://yomikyo.or.jp