【CD】72 Preludes/藤田真央

 藤田真央のソニークラシカル待望の第2弾アルバムは、ショパン、スクリャービン、矢代秋雄による「24の前奏曲」を収めた2枚組の大作だ。24の全調を網羅した、作曲家それぞれの着想の宝庫のような作品群を、藤田は説得力のあるテンポ設計や、声部の立体感を生む恐るべきコントロール力によって理知的に描き分ける。ショパンの情念、スクリャービンの陰影が鮮やかに浮かび上がる一方、1945年に15歳の矢代が残した前奏曲は、五音音階が随所に聞かれる作品で、藤田はほのぼのとした繊細な世界観を表現。出版されてまだ日が浅い作品だが、一つの決定盤がここに誕生した。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年11月号より)

【information】
CD『72 Preludes/藤田真央』

ショパン:24の前奏曲/スクリャービン:24の前奏曲/矢代秋雄:24の前奏曲

藤田真央(ピアノ)

ソニーミュージック
SICC 30894〜5(2枚組) ¥4000(税込)