国内外のトッププレイヤーが夢の共演! 浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ

原田慶太楼のタクトでサマーミューザ初登場!

浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ

文:オザワ部長(吹奏楽作家) 

 世界のスタープレイヤーが集結し、川崎で吹奏楽の超名曲の数々を演奏! そんな夢のようなコンサートが8月3日(土)、ミューザ川崎シンフォニーホールで実現する。

 毎年、国内外のトップアーティストを静岡県浜松市に迎えて開催される浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルでは、レッスンを担当するアーティストたちがスペシャルウインドオーケストラを結成し、演奏を披露している。浜松でしか聴けなかったそのコンサートが、なんと今年は特別コンサートとして「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024」でも開催されることになったのだ。

 浜松以外では今回が初。また、年度によってメンバーも変わるため、「一期一会」の構成となる。名付けて、「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」!

 出演するのは、海外からはミシェル・モラゲス(フルート/フランス国立管弦楽団)、マイケル・コリンズ(クラリネット/ソリスト、指揮者)、ジャン=イヴ・フルモー(サクソフォン/ソリスト)、ラーシュ・カーリン(トロンボーン/デンマーク放送交響楽団)、ステファン・ラベリ(テューバ/パリ管弦楽団)など著名なプレイヤーがずらり。

左より:ミシェル・モラゲス、マイケル・コリンズ、ジャン=イヴ・フルモー、ラーシュ・カーリン、ステファン・ラベリ

 また、国内アーティストには、上野博昭(フルート/京都市交響楽団)、宮村和宏(オーボエ/東京佼成ウインドオーケストラ)、須川展也(サクソフォン/東京藝術大学招聘教授)、住谷美帆(サクソフォン/ぱんだウインドオーケストラ)、津守隆宏(ホルン/名古屋フィルハーモニー交響楽団)、野田亮(トランペット/東京フィルハーモニー交響楽団)、桒田晃(トロンボーン/読売日本交響楽団)、安東京平(ユーフォニアム/国立音楽大学講師)など、こちらもビッグネームが並んでいる。

須川展也 (c)Toru Hasumi

 この素晴らしいプレイヤーたちを指揮するのは、いまや欧米を中心に目覚ましい活躍を続けている若き俊英、原田慶太楼だ。現在はサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督や東京交響楽団の正指揮者などを務めているが、実は吹奏楽とも縁が深い。

 原田は小学5年のときに今回共演する須川展也のアルバム『Beau Soir』でクラシック音楽に出会い、吹奏楽部に入部。アメリカに留学した際には吹奏楽界に大きな足跡を残した指揮者、フレデリック・フェネルに出会い、指揮を基礎から学んだという経歴がある。現在はオーケストラに加えて、プロ吹奏楽団との共演が多いのも頷ける。

原田慶太楼(c)37 Frames

大人気のナンバーから懐かしのコンクール課題曲まで

 そんなマエストロ原田と国内外の大物プレイヤーが集まった「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」だが、演奏する曲目も気になるところだ。海外の作曲家によるアカデミックな作品が中心になるかと思いきや、日本の吹奏楽界ではおなじみの人気曲が多数取り上げられる。

 真島俊夫作曲の「三つのジャポニスム」や酒井格作曲の「たなばた」はコンサートで大人気の曲だ。

 ベルギーの作曲家、ベルト・アッペルモントの「ブリュッセル・レクイエム」は2016年に同国の首都ブリュッセルで発生した連続爆破テロ事件の犠牲者への鎮魂歌として書かれた作品だが、2019年度の全日本吹奏楽コンクール(全国大会)ではなんと11団体が演奏するという大ヒットとなった。非常に高難度な曲として知られる「ブリュッセル・レクイエム」をスーパープレイヤーたちがどう料理するのかが楽しみだ。

 また、「吹奏楽のための交響曲〈ワイン・ダーク・シー〉」が日本の吹奏楽界で大人気のアメリカの作曲家、ジョン・マッキーの作品からは「レッドライン・タンゴ」が演奏される。

 巨匠・三善晃の作品であり、1992年度の吹奏楽コンクールの課題曲だった「吹奏楽のための〈クロス・バイ マーチ〉」がプログラムに入っているのも嬉しい。かつて日本中の中高生たちが取り組んだ課題曲を、世界のトッププレイヤー(しかも、オーケストラメインで活動している奏者も多い)が演奏してくれるとは、特に吹奏楽ファンにとっては感慨深いものがあるだろう。

 オーケストラの編曲作品としては、これまた日本で長く愛され、佐渡裕もシエナ・ウインド・オーケストラとの共演でしばしば取り上げているリヒャルト・ワーグナー作曲(カイエ編)「エルザの大聖堂への行列」をラインナップ。

 そして、新進気鋭の作曲家、山本菜摘の「UTAGE 〜宴〜」は今回が吹奏楽版の世界初演となる。オーケストラ版は群馬交響楽団が委嘱したが、この吹奏楽版は今回のコンサートのための、原田と浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルによる共同委嘱作品となっている。

 長く愛されている名曲からヒット曲、最新曲まで、幅広いプログラムを「ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」という最高のプレイヤー陣が奏でる、まさに夢の公演。吹奏楽ファンはもちろんのこと、普段はあまり吹奏楽を聴かないクラシックファンにもぜひ楽しんでいただきたいコンサートだ。

【Information】
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024
浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ

2024.8/3(土)13:30 ミューザ川崎シンフォニーホール

(12:50~13:10 プレコンサート)

出演
原田慶太楼(指揮)
ミシェル・モラゲス(フルート)
ディーテルム・ヨナス(オーボエ)
マイケル・コリンズ(クラリネット)
ローラン・ルフェーブル(ファゴット)
須川展也、ジャン=イヴ・フルモー(以上サクソフォン)
イェンス・プリュッカー(ホルン)
ロバート・サリバン(トランペット)
ラーシュ・カーリン(トロンボーン)
アントニー・カイエ(ユーフォニアム)
ステファン・ラベリ(テューバ) 他

プログラム
三善晃:吹奏楽のための『クロス・バイ マーチ』
ティケリ:ブルー・シェイズ
上田素生:あまやどり
真島俊夫:三つのジャポニスム
山本菜摘:UTAGE 〜宴〜(吹奏楽版世界初演)※
酒井格 : たなばた
ワーグナー(カイエ編):エルザの大聖堂への行列
マッキー:レッドライン・タンゴ
アッペルモント:ブリュッセル・レクイエム
※オーケストラ版:群馬交響楽団委嘱
吹奏楽版:原田慶太楼、浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル共同委嘱
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200

https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/calendar/detail.php?id=3861

特集:フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024
今年で20回目の開催となる日本最大級のオーケストラの祭典「フェスタサマーミューザ KAWASAKI」。ホスト・オーケストラの東京交響楽団をはじめとする首都圏の9団体に、初登場の佐渡裕&兵庫芸術文化センター管弦楽団、9年ぶりの吹奏楽企画となる「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」を加えた全11団体が日替わりで登場。「夏音(サマーミューザ)!ブラボー20周年」を合言葉に熱き競演を繰り広げる。その他、小曽根真が次世代のミュージシャンたちと一夜限りのセッションを披露する「サマーナイト・ジャズ」、ライプツィヒ聖トーマス教会のオルガニスト、ヨハネス・ラングによる「真夏のバッハ」、ホールアドバイザー小川典子のライフワーク「イッツ・ア・ピアノワールド」と恒例企画も充実の内容。アニバーサリーにふさわしい珠玉の19公演。ぜひ会場で聴き比べたい。