大友直人(指揮) 東京交響楽団

しなやかなタクトで導く壮大なエルガーの世界

左:大友直人 ©Rowland Kirishima
右:フセイン・セルメット ©Mat Hennek

 東京交響楽団が七夕に開催する東京オペラシティシリーズ 第140回では、同楽団名誉客演指揮者の大友直人がお得意のエルガー作品を引っ提げて登場する。

 大友が東響の正指揮者に就任したのは1991年のこと。その長い共演歴において大友はイギリスのモダンな作品を好んで取り上げてきたが、とりわけエルガーは重要な作曲家であり、交響曲以外にも「神の国」「使徒たち」「ゲロンティアスの夢」といった日本では知られていなかったオラトリオの大作を紹介した功績は大きい。その集大成として昨年1月の「名曲全集」では交響曲第2番を取り上げ、CD化されて話題にもなっただけに、今回の第1番に注目が集まる。

 この作品は、50代に入り成功を収めつつあったエルガーの名声を決定づけた作品で、冒頭に提示される勇壮な主題が循環する。初演当初から名曲の呼び名が高く、最近は日本でも演奏の機会が増えてきた。作曲家の書法を熟知した大友のタクトが、作品を見通し良くダイナミックに提示してくれるだろう。

 プログラム前半にはトルコのベテラン、フセイン・セルメットを招きバルトークのピアノ協奏曲第2番。幅広いレパートリーを持つセルメットは、東響ファン、ピアノ好きの方々にはおなじみのピアニストだろう。バルトークは大友&東響と98年に第3番を共演しており、その様子はCDにもなっているが、丁寧かつ繊細に運びながら、最後はキレのあるテクニックで力強く締めている。時代が一回りした今、第2番でどんな化学反応が起こるのかが楽しみだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年7月号より)

東京オペラシティシリーズ 第140回
2024.7/7(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp