待ち望んだプログラムをインスピレーションあふれる名手たちと
2月の週末、めぐろパーシモンホールの小ホールで、「東欧をめぐる物語」と題したこだわりの演奏会が開かれる。中心となるのはヴァイオリニスト毛利文香。アンサンブル活動も積極的に繰り広げる毛利が“ずっと取り組んでみたかった”という「東欧プログラム」と「ピアノとヴァイオリンとクラリネットのトリオ」のコンサートが、すばらしい顔ぶれで実現する。ピアノは兼重稔宏。ゼフィルス・ピアノ五重奏団メンバーなど室内楽に通じ、多彩な演目に心強い存在となる。クラリネットはハンガリー出身、日本を拠点とする名手、イシュトヴァーン・コハーン。彼のルーツとも重なる名曲を、達人の技で聴かせてくれる。
プログラムは4ヵ国の作曲家の作品で、前半はヴァイオリンとピアノ、後半はクラリネットが加わる2部構成。まずチェコのドヴォルザーク「4つのロマンティックな小品」で、ヴァイオリンの名旋律を味わって開幕。次は一気にムードを変えて、ルーマニアのエネスクのヴァイオリン・ソナタ第2番。妖しい魅力満点の音楽で、他では聴けない濃密な表現に浸れるはず。3人になる後半は、ロシアのストラヴィンスキー「兵士の物語」(三重奏版)。新古典主義の作風の先駆的な傑作で、トリオ版でそのエッセンスを濃縮して楽しめる。最後はやはり、ハンガリーのバルトーク「コントラスツ」。この編成の傑作にして代表作で、しかもコハーンのクラリネットで聴けるのは嬉しい。理想的な曲目と演奏者の組み合わせで、東欧の精髄を堪能する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年1月号より)
2024.2/4(日)15:00 めぐろパーシモンホール(小)
問:めぐろパーシモンホールチケットセンター03-5701-2904
https://www.persimmon.or.jp