巧みなタクトが導く管弦楽の色彩美とバレエ音楽の躍動
トゥガン・ソヒエフとともに、N響の2024年がはじまる。多彩な指揮者を迎えるなかでも、もっとも熱いケミストリーが期待されるのがソヒエフとの1月ではないか。フランス、ロシア、ドイツと連なる3様の定期公演の筆頭を飾るのが、ビゼーとラヴェルによるAプログラムだ。
祖国ロシアがウクライナに侵攻した事態を受け、2022年の春にボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団のシェフをともに辞任したソヒエフが、N響の指揮台に3年ぶりに立ったのが2023年1月のこと。B定期ではバルトークのヴィオラ協奏曲シェルイ版に続き、ドビュッシーの「海」とラヴェルの組曲「ダフニスとクロエ」という得意のフランス名作を指揮した。これが綿密に構築された熱演で、ソヒエフとN響の信頼と挑戦に格段の深まりがうかがえた。色濃い響きと情熱に漲るなか、近年の密度の高い音楽づくりが新たなステージに踏み込んださまが、まざまざと感じられたのだ。
待望の再会となる1月A定期は、フランス音楽に加え、ロシア、そしてバレエがまたの主題。ラヴェルの「マ・メール・ロワ」はピアノ連弾から管弦楽化された組曲で、その後バレエにも編曲される。「ラ・ヴァルス」はオーケストラのための舞踊詩で、もともとはバレエ・リュスの依頼で作曲された。前半の「カルメン組曲」はビゼーのオペラ名作を、20世紀ロシアのシチェドリンが刺激的に料理したバレエ音楽。鮮やかに心躍る新年のはじまりである。
文:青澤隆明
(ぶらあぼ2024年1月号より)
第2001回 定期公演 Aプログラム
2024.1/13(土)18:00、1/14(日)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp