1879年版のピアノ協奏曲を聴ける貴重な機会
1893年11月6日、チャイコフスキーは53年の生涯を閉じた。9日前に交響曲第6番「悲愴」を自らが指揮して初演したばかりだった。
それから130年後の作曲家の命日、彼の代表的な協奏曲をまとめて演奏するコンサートが開催される。ピアノ協奏曲第1番にヴァイオリン協奏曲、独奏チェロと管弦楽のために書かれた「ロココの主題による変奏曲」だ。
「ロココの主題による変奏曲」の独奏はパブロ・フェランデス。ソニークラシカルでのデビュー盤ではラフマニノフやファリャを弾き、そのキレの良さと濃厚な歌謡性に注目を集めたチェリストである。ヤン・ムラチェクの弾くヴァイオリン協奏曲も要注目。2016年にイルジー・ビエロフラーヴェクの招きにより25歳でチェコ・フィルのコンサート・マスターに就いた俊英だ。
ピアノ協奏曲第1番には、鮮烈なテクニックと知的なアプローチが光るキリル・ゲルシュタインが登場する。彼が「もっとも作曲家の理想に近い」と一押しする「1879年第2版」による演奏はとても珍しい機会。冒頭のピアノの和音が分散和音になるなど、最終稿よりも優雅なピアノ協奏曲が楽しめるはずだ。
そんな豪華なソリストたちと共演するのは、高関健と東京フィル。先日行われたプレトニョフを迎えてのラフマニノフのピアノ協奏曲シリーズでは、ソリストと共に鮮やかな響きを作り出していた。読みの深い指揮者と鮮やかな音色をもつオーケストラが充実したチャイコフスキーを奏でてくれるだろう。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年11月号より)
2023.11/6(月)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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