熱きマエストロが世界屈指の精鋭集団の本領を引き出す
2022年の9月からNHK交響楽団の首席指揮者のポストに就き、日本の音楽界における存在感もとみに増しつつあるファビオ・ルイージ。ドレスデンやMET、チューリヒといった名門歌劇場で輝かしいキャリアを積み上げ、シンフォニックなレパートリーに示す解釈も切れ味鋭い。優れた職人性と知的な洞察力の両面が、素晴らしくバランスのとれたマエストロだ。
その彼が今年の11月、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と来日ツアーに臨むというから期待度満点。ベルリン・フィルやウィーン・フィルとも肩を並べる、ヨーロッパ屈指のオーケストラが能力を全開させながら、正攻法であると同時に新鮮味も豊かなルイージ一流のアプローチを、見事に音として鳴り響かせるに違いない。音色の深みと機動力を兼ね備えた弦楽器セクション、そして個人技と集団芸の両方に秀でた管打楽器セクションが、サッカーの名門クラブさながらのチームプレイを披露する姿が目に浮かぶ。
文京シビックホールを舞台とする11月9日のコンサートでは、ビゼーの交響曲第1番とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」(プログラムB)が演奏される。どちらもメロディアスな美観に富み、しかしそれをただ表面的に歌い上げるだけでは引き締まった構築感が得られない作品だ。ルイージの指揮を得て、その真価を再認識するステージとなるだろう。潤沢な音響効果に定評のあるホールの空間が、コンセルトヘボウ管の持ち味と相性抜群なことも想像に難くない。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2023年8月号より)
2023.11/9(木)19:00 文京シビックホール
問 シビックチケット03-5803-1111
https://www.b-academy.jp/hall/
※来日ツアーの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.kajimotomusic.com/concerts/2023-royal-concertgebouworkest/