モダンの弦楽器の美しさとカンタービレを伝え続ける新イタリア合奏団が、バッハの協奏曲に取り組んだ。それも、旧作を転用したと考えられるチェンバロ協奏曲から“復元”したヴァイオリン協奏曲集。聴きなれた曲もソロが弦に変わることで、爽快さとレガートの歌が前面に出てきて新鮮な姿で楽しめる。グリエルモのソロも、誰もが安心して聴ける安定の名技。モーツァルトとメンデルスゾーンの弦楽作品は実に心地よく、合奏団の実力を満喫できる。珍しいのはロッシーニの序曲の弦楽合奏版で、編曲がいいし、推進力と歌いまわしの愉悦感は“イタリア”を名に冠する彼らの面目躍如。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年8月号より)
【information】
CD『J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 /フェデリコ・グリエルモ&新イタリア合奏団』
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調、同ト短調/メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第10番/モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調/ロッシーニ(V.ガンバロ編):歌劇《アルジェのイタリア女》序曲
フェデリコ・グリエルモ(ヴァイオリン)
新イタリア合奏団
マイスター・ミュージック
MM-4519 ¥3520(税込)