ウェルナー・ヒンク(ヴァイオリン/ウィーン弦楽四重奏団)

ウィーンSQの集大成をお聴かせします

左より:ウェルナー・ヒンク(第1ヴァイオリン)、フーベルト・クロイザマー(第2ヴァイオリン)、ハンス・ペーター・オクセンホファー(ヴィオラ)、フリッツ・ドレシャル(チェロ) ©Wilfried Kazuki Hedenborg
左より:ウェルナー・ヒンク(第1ヴァイオリン)、フーベルト・クロイザマー(第2ヴァイオリン)、ハンス・ペーター・オクセンホファー(ヴィオラ)、フリッツ・ドレシャル(チェロ) ©Wilfried Kazuki Hedenborg

「結成50周年というのはたしかですが、活動自体はもっと前からなのです」
 ウィーン弦楽四重奏団のリーダーであるウェルナー・ヒンクはこう切り出した。
「戦後モノがなかった時代に少年時代を送った私にとって、友人と音楽を奏でることは最高の“遊び”でした」
 やがて音楽院に学び始めたヒンクは、仲間の学生たちとともに室内楽活動を展開。ウィーン国立歌劇場管弦楽団およびウィーン・フィルに入団した1964年、一足先にこのオーケストラの団員となっていた彼らとウィーン弦楽四重奏団を結成した。さらに1974年ウィーン・フィルのコンサートマスターに就任し、多忙な日々を送るようになった以降も、ヒンクにとって室内楽の活動は重要な位置を占めてきた。
「コンサートマスターという立場を離れ、敬愛する仲間と対等に音楽的な会話を交わす。これは私にとってまたとないリラックスの時でした」
 しかもウィーン・フィルには、多くのメンバーが室内楽を楽しむという伝統が存在する。
「室内楽は音楽的な対話であるということが言われますが、これらの小さな対話が積み上げられた結果、オーケストラ全体にも室内楽的な意識で演奏するという姿勢が培われてゆくのです」
 こうしてヒンクがコンサートマスターのポジションにあった30年以上もの間、ウィーン弦楽四重奏団はメンバー・チェンジを経つつも続行され、レパートリーも拡大された。
「ウィーンにゆかりのある作品は私たちの音楽的ルーツですし、日本をはじめ外国へ演奏旅行をおこなう際には、いわば名刺がわりの存在といえます。ただし活動の本拠地であるウィーンではそれにとどまることなく、ショスタコーヴィチや現代作品など、常に新たな曲目に挑戦してきました。またそれを経ることによって、スタンダードな作品を取り上げる際にも、新たな発見が幾度となくありました」
 もちろん時にゲストを招いて、弦楽四重奏以外のレパートリーを手がける場合も少なくない。
「その際重要となるのは、ゲストが私たちと一緒に呼吸をし、音楽を作り上げてくれるよきパートナーであるかどうかということなのです。今まで数多くの演奏家と共演してきましたが、優れたパートナーとなった人はごく限られますね。日本公演で共演する遠山慶子さんは、その数少ないパートナーの1人に他なりません」
 そんなウィーン弦楽四重奏団にとって、今回の日本ツアーはいわば集大成。十八番のモーツァルト「狩」やピアノ四重奏曲第1番、シューベルト「死と乙女」などをとりあげる。
 半世紀にわたる歩みが醸し出す響きの極みを楽しもう。
取材・文:小宮正安
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

11/20(木)19:00 紀尾井ホール
問:カメラータ・トウキョウ03-5790-5560
http://www.camerata.co.jp

他公演 
11/21(金)フィリアホール 問:045-982-9999
11/22(土)所沢市民文化センターミューズ 問:04-2998-7777
11/23(日・祝)三重県文化会館(中) 問:059-233-1122
11/25(火)武蔵野市民文化会館(小) 問:0422-54-2011
11/29(土)兵庫県立芸術文化センター(完売)