子どもも楽しめる異色のオペラが6年ぶりに再演
東京文化会館のオペラBOXは、オペラのビギナーも楽しめる、小ホールでのコンパクトな公演。舞台と客席との距離が近く、歌手の息遣いが伝わってくる。今年の演目は、メノッティの《Help! Help! グロボリンクスだ! 〜エイリアン襲来!!〜》。2017年の上演が好評を博しての再演である。メノッティのこのオペラは、エイリアンの襲来とそれに立ち向かう学校の人々の物語。ストーリーは明快で、子どもでも大丈夫。それどころか、このオペラには、合唱やダンスで子どもたちも参加している。
また、この企画には、東京文化会館が主催している東京音楽コンクールの入賞者たちが積極的に起用されている。ヒロインのエミリーには種谷典子(第16回第2位)、バスの運転手に岡昭宏(第12回第1位)、算数の先生に八木寿子(第9回第1位)、国語の先生にヴィタリ・ユシュマノフ(第14回第2位)、理科の先生に奥秋大樹(第19回第3位)、そして重要なヴァイオリン独奏は岸本萌乃加(第9回弦楽部門第1位)が担う。佐藤美枝子や折江忠道ら芸達者なベテランが脇を固めているのも心強い。指揮は柴田真郁、演出は岩田達宗。
しかし実は、このオペラBOXは、ビギナーに限らず、オペラ・ファンにも観てもらいたい。かつて人気があったメノッティのオペラは今ではなかなか上演されない。エイリアン襲来はいかにもこの作品が作られた1960年代当時の時事ネタではあるが、生の音を大切にするこのオペラは、今だからこそ、価値を増しているといえよう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年7月号より)
2023.9/24(⽇)15:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp