20世紀ロシアを代表する名作でシーズンラストを飾る
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の2022年シーズン最後の定期演奏会は、常任指揮者・高関健の登壇で、ロシア音楽プログラム。近年、高関は、サンクトペテルブルグ・フィルの定期演奏会を指揮するなど、ロシア音楽への造詣をますます深めている。
メインはショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。この交響曲は、ナチス・ドイツに包囲されたレニングラードで書かれ、ソビエト国民の勝利の確信を描く作品である。別動隊の金管楽器も加わって壮大なクライマックスが築かれるが、戦争での勝利を歓喜する音楽ではないだろう。ロシアのウクライナ侵攻が続いている現状において、高関がショスタコーヴィチのメッセージをどう表現するか興味津々である。
演奏会前半には佐藤晴真の独奏でカバレフスキーのチェロ協奏曲第1番が取り上げられる。佐藤は、2019年のARDミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門の優勝者であり、18年にはルトスワフスキ国際チェロ・コンクールでも第1位を獲得した、世界が注目する若手チェリスト。20世紀半ばのソビエト連邦を代表する作曲家カバレフスキーは大衆にもわかりやすい音楽を書いた。日本で最も知られている彼の作品はその「ギャロップ」が運動会の定番になっている組曲「道化師」に違いない。1949年に完成されたチェロ協奏曲第1番もロシア民謡を取り入れるなど親しみやすい作品となっている。名手佐藤が作品の魅力を十分に引き出してくれるであろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年3月号より)
第359回 定期演奏会
2023.3/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp