作曲家の視点を通して生み出されるオーケストラ・サウンドの躍動
昨年からスタートした「すみだクラシックへの扉」は、話題のアーティストで名曲を聴かせる嬉しいシリーズだ。
4月は指揮に久石譲が登場する。久石といえば誰もが知るメロディー・メーカー。思わず口ずさみたくなる旋律がオーケストラのゴージャスなサウンドに彩られる様に、心を揺さぶられた人も多いはずだ。ここ10年ほどは指揮にも積極的で、各地のオケに客演しているが、新日本フィルとは、久石作品で構成するワールド・ドリーム・オーケストラでのコラボなどを通じ、最も関係が長く深い。昨年からはComposer in Residence and Music Partnerに就任。進化を続けている。
今回はフランス近現代の名作でプログラミング。ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は、けだるい昼下がりの幻想を歌い上げ、現代音楽の扉を開いた作品で、「クラシックへの扉」にふさわしい。
昨年、没後100年を迎えたサン=サーンス「チェロ協奏曲第1番」は、30代の作曲家として脂の乗った時期に書かれ、劇的でロマンティックな協奏が繰り広げられる。独奏のリーウェイ・キンは中国系オーストラリア人で国際的に活躍している。久石とは初共演、どんな化学反応が起きるのか。
美術館での鑑賞体験を音で綴った「展覧会の絵」は、ロシア人ムソルグスキーのピアノ曲だが、「オーケストラの魔術師」と評されたフランス人ラヴェルの管弦楽編曲によって人気が爆発した。ラヴェルのマジックは作曲家&指揮者・久石の目にどう映るのだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年3月号より)
すみだクラシックへの扉 第6回
2022.4/15(金)、4/16(土) 各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp