いよいよ12月24日 東京文化会館で偉業達成
毎年12月にバッハ「ゴルトベルク変奏曲」演奏会を開催しているチェンバロ奏者 小林道夫さん(88歳)。12月24日のリサイタルで第50回の節目を迎えます。50年連続で一度も休むことなく、ひとつの作品を演奏し続けてきた歳月を想像するだけでも、その凄さが実感されます。まだ国内にモダン・チェンバロしかなかった時代、1972年の第1回から長きにわたり演奏会のマネジメントを担当してきたミリオンコンサート協会の小尾旭さんは、2020年7月に亡くなられましたが、まさに小尾さんと二人三脚で成就させた偉業でもあります。
♪全50回の開催データ♪
1. 1972年12月23日(土)東京文化会館小ホール
2. 1973年12月22日(土)東京文化会館小ホール
3. 1974年12月21日(土)東京文化会館小ホール
4. 1975年12月20日(土)東京文化会館小ホール
5. 1976年12月24日(金)東京文化会館小ホール
6. 1977年12月23日(金)石橋メモリアルホール
7. 1978年12月23日(土)石橋メモリアルホール
8. 1979年12月24日(月)東京文化会館小ホール
9. 1980年12月25日(木)東京文化会館小ホール
10. 1981年12月25日(金)東京文化会館小ホール
11. 1982年12月24日(金)東京文化会館小ホール
12. 1983年12月24日(土)東京文化会館小ホール
13. 1984年12月24日(月)東京文化会館小ホール
14. 1985年12月25日(水)東京文化会館小ホール
15. 1986年12月24日(水)東京文化会館小ホール
16. 1987年12月24日(木)東京文化会館小ホール
17. 1988年12月24日(土)東京文化会館小ホール
18. 1989年12月21日(木)東京文化会館小ホール
19. 1990年12月25日(火)東京文化会館小ホール
20. 1991年12月24日(火)東京文化会館小ホール
21. 1992年12月27日(日)東京文化会館小ホール
22. 1993年12月25日(土)東京文化会館小ホール
23. 1994年12月26日(月)東京文化会館小ホール
24. 1995年12月26日(火)東京文化会館小ホール
25. 1996年12月25日(水)東京文化会館小ホール
26. 1997年12月25日(木)東京文化会館小ホール
27. 1998年12月24日(木)津田ホール
28. 1999年12月26日(日)津田ホール
29. 2000年12月22日(金)津田ホール
30. 2001年12月25日(火)東京文化会館小ホール
31. 2002年12月24日(火)津田ホール
32. 2003年12月24日(水)東京文化会館小ホール
33. 2004年12月24日(金)津田ホール
34. 2005年12月24日(土)東京文化会館小ホール
35. 2006年12月23日(土)津田ホール
36. 2007年12月23日(日)東京文化会館小ホール
37. 2008年12月24日(水)津田ホール
38. 2009年12月23日(水・祝)東京文化会館小ホール
39. 2010年12月23日(木・祝)津田ホール
40. 2011年12月25日(日)東京文化会館小ホール
41. 2012年12月22日(土)津田ホール
42. 2013年12月22日(日)東京文化会館小ホール
43. 2014年12月23日(火・祝)津田ホール
44. 2015年12月27日(日)東京文化会館小ホール
45. 2016年12月23日(金・祝)東京文化会館小ホール
46. 2017年12月24日(日)東京文化会館小ホール
47. 2018年12月24日(月・祝)東京文化会館小ホール
48. 2019年12月21日(土)東京文化会館小ホール
49. 2020年12月20日(日)東京文化会館小ホール
50. 2021年12月24日(金)東京文化会館小ホール
11月25日には、マイスター・ミュージックから記念盤CD『J.S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲』もリリースされました。ライナーノートのなかで、小林さんは「云い訳」と題し「年令と共に、頭と指が私の意志を裏切ることが多くなってきた」と吐露していますが、「バッハ作品の凄さは、どこまで勉強しても、常にその先へと誘われる」と語る、その謙虚な佇まいこそ、半世紀にわたり続けてこられた原動力なのかもしれません。
ぶらあぼでは、小林さんとN響ゲスト・コンサートマスター白井圭さんの対談動画シリーズを無料公開しています。盟友とも言えるオーレル・ニコレとのお話や、カラヤンとの共演、フィッシャー゠ディースカウの自宅を訪ねたときのエピソードなど、まさに戦後の日本クラシック音楽シーンの歩みを繙くような、レジェンドならではの興味深いトークが満載です。こちらもぜひ年末年始を利用してご覧ください。
半世紀前、ミリオンコンサートの小尾旭さんにお誘いいただいて、それこそ清水の舞台から跳び降りる心境で「ゴルトベルク変奏曲」を弾き始めた頃は、現在のようなタイプのチェンバロは、まだ一般的ではなく、音色の切り換えはペダルを使うので便利であったものの、楽器全体がピアノのようながっちりした枠構造であったために、響が豊かとはとても言えない、いわゆるモダン・チェンバロでした。ドイツ留学で学んだのもそのタイプの楽器で、演奏スタイルも、基本的にはそれ迄ピアノを通じて身につけた演奏スタイルで、それに多少の知識を数少ない参考書籍から補うというような形のものでした。ただ、ペダルと、16フィートと呼ばれるオクターヴ低い音を出すストップを持つおかげで、音色を多彩に変化させることができて、その点は有利でした。
何年かして、昔のように薄い板で作られた箱構造の楽器が主流になり、響が豊かで単独の音色で1つの楽章を弾き通しても退屈することは無いし、2つの隣合った音をつなぐか切るか、長さをどのように処理するかで音楽を生き生きとさせられることを知って、楽器を変えたのですが、最初からそのタイプの楽器で育った多くの若手演奏家達の生気溢れる見事な演奏に煽られ乍ら沢山学ばせてもらい、尚且つ、若い頃からレコードで聴いていたエドヴィン・フィッシャーの平均律、日比谷公会堂で聴いたバックハウスの半音階的幻想曲とフーガ、日生劇場で聴いたカール・リヒターのミサ曲ロ短調の、人間感情のすべてを包みこみ、それを超えてとんでもない高み迄昇っていくような、大きくて、厳しくて、暖かい世界も忘れないようにしたいと思い乍ら、少しずつ増えてきた参考書を頼りに手探りしながら毎年歩いてきて、まだ現在地点あたりでうろうろしている始末なので、本当に冷汗が出ます。
このような私の遅々とした歩みを、毎年本当に沢山の方々が聴きに来て下さいましたが、何度も繰り返してお出かけ下さった方がかなりな数いらっしゃると伺っています。「チェンバロも弾きます。」という私のような人間にとって、とても大きな「プレッシャー」であることは勿論なのですが、同時に想像することも出来ない巨大な「光栄」です。心底、生きていて良かったと思います。想像もできない大きな光栄は、このコンサートを思いつかれ、すべての準備を整えて、毎年演奏することだけに集中させて下さった小尾さんとミリオンコンサートのスタッフの方々にも感じております。
本当に本当にありがとうございました! 小林 道夫
(ミリオンコンサート協会ウェブサイトより転載)
取材協力・資料提供:ミリオンコンサート協会
【公演中止】 50年連続 第50回 小林道夫チェンバロ演奏会
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲
12/24(金)14:00 東京文化会館(小)
問 ミリオンコンサート協会 03-3501-5638
※2021年12月24日(金)14時から東京文化会館小ホールにて開催を予定しておりました「小林道夫 チェンバロ演奏会 J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988」は、小林道夫氏の体調不良により演奏会を中止とさせていただきます。(12/20 主催者発表)
【CD Information】
J.S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲 〜小林道夫の芸術 X〜
小林道夫(チェンバロ)
J.S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
J.S. バッハ:コラール「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」BWV 699
ライヴ・レコーディング(2020.12.20 東京文化会館)
マイスター・ミュージック
MM-4500-01(2枚組)
2021.11/25発売