25の作品で25の世界観を表現
近年、オーケストラや室内楽などさまざまな楽器との共演に活躍の場を広げ、音楽性に磨きをかける三浦友理枝が、4年ぶりにピアノソロ・アルバムを発表する。タイトルは『Miniatures(ミニアチュアーズ)』。いわゆるピアノの名曲集といえるが、三浦が作り上げたものは単なるオムニバスではない。
「私にとって新しい挑戦でした。これまではショパン作品集、ラヴェル作品集というように一人の作曲家に絞ったアルバムを作ってきましたが、今回は18人の作曲家による25の作品群です。書かれた時代も国も飛び越えて、それぞれの世界観を作るというのは今までにない試みでしたね」
その挑戦に、三浦はどのような姿勢で臨んだのだろうか。
「ここ何年も室内楽に力を入れ、その中で弦楽器や管楽器にはピアノとまったく違う世界が広がっていることを知りました。ボウイングやブレスを要する楽器には、独特の音楽の捉え方があります。フレージングやハーモニーの作り方などについて、ピアノと向き合うだけでは得られなかった世界が開けていきました。今回のアルバムには、そうした他の楽器とのアンサンブルで蓄えてきた『引き出し』を全部ひっくり返して、すべてを昇華させたと言えます」
25曲は三浦自身の選曲である。
「今ピアノを習っている子どもたちにぜひ聴いてもらいたい作品ばかりです。中にはリゲティの現代的な作品や、ラフマニノフの高度な技術を要する曲もあえて組み込みました。『いつかこんな曲が弾きたいな』と感じてくれたら嬉しいですね。自分が子どもの頃に弾いた曲は、今の自分の解釈との違いが感じられて楽しかったです。実は私、メンデルスゾーンやグリーグの作品をレッスンで弾いてこなかったのですが、前者の品の良さ、後者の北欧の澄んだ空気感などを、このアルバムで表現したいと思いました」
アンサンブルにも変わらず精力的に取り組む予定だ。5月の『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン』(東京)では、昨年に引き続きN響ホルン奏者の福川伸陽とのデュオで出演する。チケットはすでに完売だ。6月には『浜離宮ランチタイムコンサート』に7年ぶりに再登場する。
「11時半開演なので、今回も早起きを頑張ります(笑)。今回のアルバムの曲とショパンを半分ずつくらい入れる予定です。ショパンのスケルツォ第2番は初挑戦です。数年前に聴いたツィメルマンの素晴らしい演奏が印象に残っていますので、私もその境地に近づきたいです!」
輝く笑顔で語る三浦に、活動の充実ぶりが伺われた。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2014年5月号から)
浜離宮ランチタイムコンサート vol.125
★6月24日(火)・浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
【CD】『Miniatures』
エイベックス・クラシックス
AVCL-25819
¥3000+税