【特別インタビュー】シルヴァン・カンブルラン(読売日本交響楽団常任指揮者)

読響との集大成となる9つのプログラム

 精緻な彫琢で読響に新時代をもたらしたカンブルランが、2018/19年に常任指揮者として最後のシーズンを迎える。彼は3回来日し、9つのプログラムを披露。内容は多彩かつ意味深い。
(取材・文:柴田克彦 写真:M.Terashi/TokyoMDE)

「全体には2つの観点があります。1つは読響と取り組んだ曲の再演。もう1つはラモーからハースに至る250年の歴史を辿ることです」
 4月の定期は、アイヴズの「ニューイングランドの3つの場所」とマーラーの交響曲第9番。
「マーラーの最後とアイヴズの始まりの組み合わせ。アイヴズの曲には、彼がやろうとした要素がコンパクトにまとめられています。マーラーの9番は、死をテーマにした曲ではなく、新しい音楽の扉を開いた曲。私はそう理解しています」
 他は、「春の祭典」を軸にしたプロと、ラモーからベートーヴェンの交響曲第7番に至るプロ。中でも、2010年の就任披露公演と13年に取り上げた「春の祭典」は、8年の関係を明示する演目だ。
「『春の祭典』はもはや私の体の一部。私は、バレエ音楽であることを忘れず、物語を大切にすべきだと思っています。また私はラモーを愛しています。彼は近代オーケストラの創始者であり、喜び溢れる音楽にはモダンな要素が多分に含まれています。ベートーヴェンの7番は毎回発見がある作品。古典派の曲では、モダン奏法で技術の全てを尽くして演奏し、常に新しいものを見出すのが私の考えです」

 9月の定期は、ペンデレツキ、シマノフスキ、ハース、ラヴェルの作品が並ぶ20世紀プロ。
「シマノフスキとラヴェルは近しい関係にあり、音色的にも共通性があります。ペンデレツキとシマノフスキはポーランドの作曲家。ペンデレツキの作品は広島の悲劇、ラヴェルの『ラ・ヴァルス』は第一次大戦の悲劇とワルツの時代の終焉を表しています。ハースの『静物』は、ラヴェルのポートレートであり、過去の存在を象徴する意味をもっています」
 他の2つは、モーツァルト&ブルックナーの交響曲「ロマンティック」と、オール・チャイコフスキー・プロ。
「ブルックナーでは、読響がスクロヴァチェフスキの指揮で披露してきた演奏と異なる、新たな可能性を提示したい。逆にチャイコフスキーは読響から学んだレパートリー。彼のオーケストレーションはモダンであり、私はこまやかなポエジーを大事にしたいと思っています」
 19年3月の定期は、シェーンベルクの大作「グレの歌」。
「これまで演奏した《トリスタンとイゾルデ》やメシアンの大作を踏まえて、大編成の曲を最後に置くこと。そこに特別な意味をこめています。曲はドラマティックかつ詩的な音楽。声が共鳴するソリスト、最高に素晴らしい新国立劇場合唱団と共に、スペクタクルな演奏をお届けできると思います」
 そして自国の近代フランス・プロと、ベルリオーズを軸にしたプロでラストを飾る。
「読響と最初に演奏したのがドビュッシーの『海』。2度演奏し、初のCDを出した『幻想交響曲』と合わせて、読響の変化を示すことができるでしょう。ただ決まった解釈ではなく、新しい何かを提供したいと考えています」
 多大な成果を映す魅力満載のラインナップを、存分に満喫したい。



【シルヴァン・カンブルラン指揮の公演情報】
現在、2018年度年間会員券、及び4月公演の1回券を発売中

■定期演奏会
19:00 サントリーホール
第577回 2018.4/20(金)[*3]

第581回 2018.9/28(金)[*6]

第586回 2019.3/14(木)[*8]

■名曲シリーズ
19:00 サントリーホール
第611回 2018.4/13(金)[*2]

第615回 2018.9/21(金)[*5] 

第620回 2019.3/7(木)[*7]

■土曜マチネーシリーズ
14:00 東京芸術劇場
第206回 2018.4/7(土)[*2]

第210回 2018.9/15(土)[*4]

第215回 2019.3/23(土)[*9]

■日曜マチネーシリーズ
14:00 東京芸術劇場
第206回 2018.4/8(日)[*1]

第210回 2018.9/16(日)[*4]

第215回 2019.3/24(日)[*9]

■みなとみらいホリデー名曲シリーズ
14:00 横浜みなとみらいホール
第103回 2018.4/14(土)[*2]

第106回 2018.9/23(日・祝)[*5]

第110回 2019.3/9(土)[*7]

[*1] ヴァイオリン=佐藤俊介
ラモー:歌劇「ダルダニュス」組曲から
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219「トルコ風」
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92

[*2] クラリネット=ポール・メイエ
チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」から
モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
ドビュッシー:クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲
ストラヴィンスキー:春の祭典

[*3] アイヴズ:ニューイングランドの3つの場所
マーラー:交響曲 第9番 ニ長調

[*4] チェロ=アンドレイ・イオニーツァ
チャイコフスキー:幻想序曲「テンペスト」 作品18
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33
チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

[*5] ピアノ=ピョートル・アンデルシェフスキ
モーツァルト:歌劇「後宮からの誘拐」序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
ブルックナー:交響曲 第4番「ロマンティック」 変ホ長調 WAB.104

[*6] ヴァイオリン=諏訪内晶子
ペンデレツキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌
シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 作品35
ハース:静物
ラヴェル:ラ・ヴァルス

[*7] フルート=サラ・ルヴィオン
イベール:寄港地
イベール:フルート協奏曲
ドビュッシー(ツェンダー編):前奏曲集
ドビュッシー:交響詩「海」

[*8] ソプラノ=レイチェル・ニコルズ
メゾ・ソプラノ=クラウディア・マーンケ
テノール=ロバート・ディーン・スミス、ユルゲン・ザッヒャー
バリトン・語り=マルクス・マルクァルト
合唱=新国立劇場合唱団(合唱指揮=三澤洋史)
シェーンベルク:グレの歌

[*9] ピアノ=ピエール=ロラン・エマール
ベルリオーズ:歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14


問:読響チケットセンター0570-00-4390 (10時〜18時・年中無休/年末年始を除く)
http://yomikyo.pia.jp/