アレクサンダー・クリッヒェル(ピアノ)

内面から溢れるみずみずしい響き

C)Henning Ross

 ドイツが生んだ注目のピアニスト、アレクサンダー・クリッヒェルが3度目の来日を果たす。歌うようにピアノを奏でるクリッヒェルの音楽は、誠実さや温かさ、それと同時にどこか抑制美も感じさせる雄弁な魅力を持つ。22歳の若さでソニー・クラシカルと専属契約を結び、その2年後にはドイツ・エコー賞「ニューカマー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した彼は、その注目度を裏切ることなく着実にクラシック界での存在感を増している。最新アルバム『夜のガスパール〜ラヴェル:ピアノ作品集』でも、作品への真摯なアプローチと、内面から溢れるみずみずしい響きでラヴェルの傑作を聴かせる。
 三鷹でのリサイタルはガーシュウィンで幕を開ける。管弦楽とピアノの名作「ラプソディ・イン・ブルー」の作曲者によるピアノ独奏版だ。少々意外な選曲だが、ジャズ的な語法を彼がどう聴かせてくれるのか実に楽しみだ。そして新譜に収録しているラヴェルの「夜のガスパール」、さらにムソルグスキーの大作「展覧会の絵」で、ドラマティックな構成力を惜しみなく発揮してくれるだろう。
 今回の来日ではクリッヒェルの室内楽にも注目したい。日本モーツァルト協会のコンサートでは、室内楽編成でモーツァルトのピアノ協奏曲第14番、第12番を、長原幸太(ヴァイオリン)、篠原智子(同)、長岡聡季(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)と共演する。アンサンブルを通じて、彼の豊かな音楽性を一層深く味わうことができそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2017年12月号より)

リサイタル 
2017.12/2(土)15:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール
問:三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122
http://mitaka-sportsandculture.or.jp/geibun/

日本モーツァルト協会 第594回演奏会 
2017.12/4(月)18:45 東京文化会館(小)
問:日本モーツァルト協会03-5467-0626 
http://www.mozart.or.jp/

CD
『夜のガスパール〜ラヴェル:ピアノ作品集』
ソニーミュージック 
SICC-30462
¥2500+税