辻 彩奈(ヴァイオリン)

本格派の駿才、注目の東京初リサイタル

©大杉隼平

 2016年モントリオール国際音楽コンクールで優勝した新星ヴァイオリニスト・辻彩奈が、3月に東京での初リサイタルを行う。1997年岐阜県大垣市生まれの彼女は、原田幸一郎らに学び、現在東京音楽大学(1年)在学中。2013年日本音楽コンクールで第2位受賞後、14年インディアナポリス最年少セミファイナリスト、15年ソウル第2位(最高位)、ハノーファー第5位と国際コンクールで実績を重ね、モントリオールでは5つの特別賞も総なめにする完全制覇を果たした。
「コンクールは名前を知ってもらうために受けてきたのですが、海外と日本の違いに驚き、審査員の先生に声をかけていただいてレッスンを受けるなど、結果以外にも得るものがありました。それに何より、“一瞬にかけること”を学んだのが大きいと思います」
 リサイタルは「名古屋や岐阜で中1から行ってきた」が、今回はひと味違う。
「東京初のリサイタルが紀尾井ホールで、ピアノも江口玲さんですから、楽しみであると同時に身が引き締まります。挑戦する気持ちを忘れずに弾きますので、今の自分をぜひ聴いて欲しいと思います」
 近代もの中心の“媚びのない”プログラムも目を引く。
「コンクールを含めて学んできた“表現すること”ができる曲、好きな曲など、自分を出せる作品を選びました。まずシューマンのソナタ第1番。シューマンを入れるのはかなりの挑戦ですが、第1楽章の入りなどが魅力的なので弾きたいと思いました。ストラヴィンスキーのデュオ・コンチェルタンテは、モントリオールで弾いた得意なレパートリー。全5曲それぞれキャラクターが違います。私は各曲に自分なりの“物語”を作っていて、例えば第4曲のジーグなら、ロシアの工場がガタガタと動いている様子を想像しながら弾くのが面白い。ショーソンの詩曲は唯一初めて弾く作品で、暗く悲しい曲の中に漲る強さが魅力。イザイの無伴奏ソナタ第4番はハノーファーでの課題曲。私は第2楽章に惹かれます」
 最後のプロコフィエフのソナタ第1番は、特に力が入る。
「日本音楽コンクールの課題曲だったので指が回るレベルにはあったのですが、インディアナで弾いたときに審査員から『プロコフィエフの怖さが全く出ていない』と言われました。それをきっかけに第1楽章の不気味な風をいかに表現するか? など、より深く勉強し、とても好きな作品になりました」
 彼女は、諏訪内晶子主宰の国際音楽祭NIPPONのマスタークラスでも評価され、昨年の宮城県名取市の公演でメンデルスゾーンの協奏曲を披露。その演奏を聴いて、素直な音と真摯かつ伸びやかな表現に、大きな“のびしろ”を感じた。目指すのは「自分の音と音楽をもったヴァイオリニスト」と語る逸材の、本格的な第1歩にぜひ立ち会いたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

3/10(金)19:00 紀尾井ホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
http://www.kajimotomusic.com/