イーグリングの“新・くるみ割り人形”〜新国立劇場バレエ2017/18シーズン

 新国立劇場舞踊部門バレエは2017/18シーズンに、開場20周年記念特別公演『ニューイヤー・バレエ』(18年1月)、こどものためのバレエ劇場『しらゆき姫』を含めた7演目を上演する。新シーズンは『くるみ割り人形』(新制作)で幕を開け、『シンデレラ』『ホフマン物語』『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と新国立劇場のレパートリーである古典全幕ものが並び、チャイコフスキーの3大古典バレエが上演されることも注目だ。
(2017.1.12 新国立劇場 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

大原永子舞踊芸術監督
大原永子舞踊芸術監督

 1月12日に新国立劇場で行われた説明会で大原永子舞踊芸術監督は、次のように意気込みを語った。
「就任から1年ごとにより難しくなり、責任を感じている。芸術監督しての責任は、作品選びも当然だが、ダンサーの成長と育成がより重要だと感じる。以前よりもダンサーの理解力が深まり、自分の感情や芝居が観客の皆さまに伝わるように表現すること、またその芸術性、才能が高まってきていると思う。その成長を私自身も感じられるほどになったことが嬉しい」とこれまでを振り返り、今後の取り組みについて「就任当初に掲げた3つのターゲット(動員、公演内容、団員の成長)を重要視し、新国立劇場での仕事が続く限りその目標を掲げていく」

 新制作は『くるみ割り人形』のみ。14年の『眠れる森の美女』改訂上演、昨年上演された『Men Y Men』を振り付けたウエイン・イーグリングが日本人デザイナーたちとともに手掛ける。
 イーグリングが新国立劇場のために制作する“新・くるみ割り人形”は、“少女クララの夢”の中で女性として成長していく物語で、古典をベースにチャレンジングな『くるみ』になるという。 
 ラインナップについて大原は「日本のバレエの観客はバレエ人口に比例していない。一般観客がどういう作品を求めているのかを考え、(新制作、コンテンポラリーも必要だと感じるが)国立の劇場として古典バレエの上演、私自身はドラマティックなバレエを入れていきたい。また、東京以外の地方公演を増やしていきたい。その際ホール側から求められる作品は古典もの(『白鳥』『くるみ』『眠れる』等)。新国立劇場の『くるみ』はロシア版、牧阿佐美版があるが、新国の劇場にあう大きな装置で上演されるため、地方に持って行くことが難しい。新制作は地方に持って行ける作品としてということも考えてのこと。また、このバレエ団の層を厚くするためにも、若手を起用し循環させ、キャスティングの面白さで観に来ていただけるようにしたい」と語った。
 オッフェンバックのバレエ「ホフマン物語」(2018年2月)は、オペラ《ホフマン物語》(2018年2〜3月)と前後して上演される。

 一方ダンスは20周年記念にあたり4演目が上演される。日本の現代舞踊の歴史において重要な位置を占める「舞踏」を再認識する上で、「舞踏の今」と題し山海塾と大駱駝艦・天賦典式が登場する他、森山開次『サーカス』再演、びわ湖ホールで好評を博したメディアアートのダンスパフォーマンス、ダムタイプの高谷史郎『ST/LL』が上演される。

 冬休みの子どもたちに舞台芸術に向き合ってほしいと、バレエ『くるみ割り人形』『シンデレラ』、演劇『かがみのかなたはたなかのなかに』の3作品を「冬の子ども劇場セット」として販売する予定だ。

なお、下記日程で一般を対象とした説明会が開催される。
■大原永子 舞踊芸術監督による2017/2018シーズン演目説明会
2017年2月18日(土)「ヴァレンタイン・バレエ」14:00公演終演後  
会場:オペラパレス客席
※入場無料
http://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/170112_009745.html

新国立劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/

左より)宮田慶子演劇芸術監督、飯守泰次郎オペラ芸術監督、大原永子舞踊芸術監督 Photo:M.Terashi/TokyoMDE
左より)宮田慶子演劇芸術監督、飯守泰次郎オペラ芸術監督、大原永子舞踊芸術監督
Photo:M.Terashi/TokyoMDE

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