新年の幕開けに室内楽の傑作はいかが?
年が明けると「ニューイヤーコンサート」と題された公演が各地で盛んに開かれる。それぞれプログラムは多彩だ。ウィンナ・ワルツなど気軽な曲目を並べる正統派も悪くないが、まったくの独自路線による「ニューイヤーコンサート」で異彩を放っているのがトッパンホールの公演。日下紗矢子のヴァイオリン、クレメンス・ハーゲンのチェロ、河村尚子のピアノという同ホールゆかりの超強力メンバーを集めて、ベートーヴェン、コダーイ、シューベルトの3曲が演奏される。といってもピアノ・トリオはシューベルトだけ。ベートーヴェンはチェロとピアノ、コダーイはヴァイオリンとチェロのためのデュオで、3曲とも編成が異なるのがおもしろい。
1曲目に演奏されるベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番は「op.5-2」という作品番号が示すように初期の作品だが、古典派ソナタの枠を打ち破ろうとする若き偉才の意欲作。続くコダーイのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲は豊かな民族色と独創性を感じさせる作品で、たった2つの弦楽器からこれほどスケールの大きな音楽表現が可能になるのかと唸らされるはず。メイン・プログラムに置かれたシューベルトのピアノ三重奏曲第2番は、作曲者晩年の傑作。シューベルトならではの寂寞とした楽想が胸を打つ名曲だ。およそ“ニューイヤー”らしからぬ選曲なのだが、おせちに飽きた頃に本当に聴きたいのはこんなプログラムなのかも。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
2017.1/10(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/