クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団

ロシア音楽の“華麗さ”と“情動を揺さぶる歌”

 東響の5月定期は、ポーランドの実力派、クシシュトフ・ウルバンスキが登場する。この人、インディアナポリス響やトロンヘイム響でポストを持つだけでなく、ベルリン・フィルをはじめとする世界の名門オーケストラでのデビューも相次いでおり、才能続出・激戦の続く30代指揮者の中でじわじわと評価をあげている。スコアを深く読み(暗譜も得意!)、きっちりとバランスを作って運んでいくタイプで、オーケストラを掌握する緻密なリード力が人気の秘密だろう。
 今回のプログラムはロシアもので筋を通しているが、趣きの異なるコンビネーションだ。プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」は、モダンな書法で極彩色の世界が繰り広げられる。巨大オーケストラを整えるあたりはウルバンスキの得意分野だし、東響も端正で美しく鳴るオケだ。独奏のアレクサンドル・ロマノフスキーは貴公子然としたピアニストで、その演奏は情熱の中に気品を感じさせる。しかも年齢も出身地(ウクライナ)もウルバンスキと近い。歯車をかみ合わせるように運びつつ、熱量の高い協奏が繰り広げられるだろう。特に息の長い結尾部では目くるめくシークエンス展開を期待したい。
 後半はチャイコフスキー「交響曲第4番」。やはりダイナミックな曲だが、プロコフィエフが錦絵のような華やかさだとすれば、こちらは暗い情動を揺さぶる深い歌が根本にある。東欧出身のウルバンスキはスラヴ系のレパートリーも得意としているが、この作品の悲劇性をどう描出するかというあたりに、前半とは違った顔が現れてくるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

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