名手たちが集結して盛り上げる春の祝祭
標高1,000メートルの高原に遅い春が訪れるゴールデンウィークの軽井沢。毎年その訪れを美しい音楽で告げるのが軽井沢大賀ホールの「春の音楽祭」だ。2005年4月のグランドオープンを飾ったのがまさにこの音楽祭だから、同ホールにとってはまた新たな1年の歴史を刻むバースデイ・イベントでもある。今年も豪華な顔ぶれが高原の新しい季節を彩る。ここでは、主にクラシック公演をメインに紹介しよう。
幕開けの主役を務めるのは、人気テノールの錦織健(4/29)。キャリアと年齢を重ねるとともに、その声は柔軟な輝きも増している。そしてなんといっても、コンサートで見せるエンターテイナーぶり。他の追随を許さない域に達している。「オペラ・アリアから日本歌曲まで」というプログラムだが、そういう何か枠組みのようなものを取り払った歌の楽しさをプレゼンテーションしてくれるに違いない。
翌日には、これまた音楽の面白さをヴィヴィッドに体験させてくれる指揮者・井上道義が、音楽監督を務める手兵オーケストラ・アンサンブル金沢を率いて登場(4/30)。両者は当音楽祭の常連。オール・メンデルスゾーン・プログラムで、注目は今年21歳の韓国の若手奏者イム・ジヨンによるヴァイオリン協奏曲。昨年のエリザベート王妃国際音楽コンクールの優勝者だ。メインは交響曲第4番「イタリア」。あの若々しさは春にふさわしい。
5月1日には、東京音楽コンクールの優勝者・入賞者たちが、若い仲間たちとともに「軽井沢チェンバーオーケストラ」として結集。2014年ブラームス国際コンクール第1位の上野通明をフィーチュアしたハイドンのチェロ協奏曲第1番はもちろん、瑞々しいエネルギーがみなぎる「浄夜」にも期待したい。
音楽祭中盤には昨年に続き、今最も注目されるアンドレア・バッティストーニが、昨年から首席客演指揮者を務める東京フィルともに登場する(5/3)。2月の二期会《イル・トロヴァトーレ》でまたも快演を聴かせた若きカリスマは、ここでは小山実稚恵とタッグを組んでチャイコフスキーのピアノ協奏曲を聴かせる。
5月4日には、下野竜也が同音楽祭初登場の読響を率いて登場する。下野はかつて、新設の読響「正指揮者」を務め、現在は首席客演指揮者のポストにある。息の合ったコンビが、オール・ベートーヴェン・プログラムで、序曲《レオノーレ》第3番、交響曲第4番・第5番「運命」を響かせる。
梅も桜も桃も花を咲かせる美しい季節を、ゴージャスな音楽とともに味わいに出かけよう。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
4/29(金・祝)16:00 錦織 健(テノール)
4/30(土)15:00 井上道義(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢
5/1(日)14:00 軽井沢チェンバーオーケストラ
5/3(火・祝)16:00 アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
5/4(水・祝)16:00 下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団 会場:軽井沢大賀ホール
問:軽井沢大賀ホールチケットサービス0267-31-5555
http://www.ohgahall.or.jp
※音楽祭の詳細は左記ウェブサイトでご確認ください。