モーツァルトと狂言が生み出す新たなシアターピース
「狂言風オペラ」がじわりと話題だ。「オペラ」といっても歌はない。管楽八重奏版編曲の音楽に乗せて大蔵流狂言の茂山一門が演じる、いわばオペラを狂言風に脚色した音楽芝居。2002年から続くプロジェクトで、これまで《フィガロの結婚》《魔笛》《ドン・ジョヴァンニ》とモーツァルト作品を取り上げており、今回は《コジ・ファン・トゥッテ》を上演する。
初回から出演するドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン管楽ゾリステンは、「ハルモニームジーク」と呼ばれて18世紀にはオペラの宣伝用にも流行したこの管楽八重奏形態の復活を活動の軸にしており、その模索の中で辿り着いたのが狂言とのコラボだった。これが驚くほどハマった。狂言の改革者だった故・茂山千之丞が「もっと早くモーツァルトと出会いたかった」と感嘆。一方で11年のドイツ公演が各地で激賞を浴びるなど、狂言、オペラ双方の伝統が、その抜群の相性を認めたのだ。
今回の注目は、落語家の桂米團治による脚本・演出(当初発表から変更)。モーツァルトの生まれ変わりを自称し、大のオペラ・ファンでもある米團治は、古典を学ぶために千之丞に能楽を師事した経験もあり、「やっと恩返しができる」と意気込む。まさにうってつけの人選だ。出演は茂山正邦、茂山童司ら第一線の狂言役者が揃った。
大阪公演は高校生以下1,000円、東京・大阪以外の4公演は最高席が4,000円と、リーズナブルな価格もうれしい。600年の伝統を誇る日本最古の喜劇とモーツァルトの笑いが交差して、新しいスタイルの喜劇が生まれる。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
2/25(木)19:00 すみだトリフォニーホール
問:マルタミュージックサービス047-335-2002
他公演
2/20(土)豊田市コンサートホール、2/21(日)宗像ユリックスハーモニーホール、
2/23(火)津山文化センター、2/24(水)NHK大阪ホール、2/27(土)ひこね市文化プラザ グランドホール
問:ヴォイシング06-6451-6263