大植英次(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 ニューイヤー・コンサート2016

大植&日本フィル、初共演でスゴいことが起こる!?

 2016年。年明け早々から日本フィルの指揮台に大植旋風が巻き起こりそうだ。
 同団と大植英次は今回が初共演。意外と言えば意外である。大植は団員の心を瞬時につかむ術を知っているだけでなく、オーケストラが置かれた環境から変えていく力を持っている指揮者。シェフとして在任した町の地元の人々のウケがいいのは、音楽性に加えて人柄に魅力があるからだろう。翻って日本フィルだが、「市民とともに歩む」をモットーに、アウトリーチ活動の草分けとして存在感を放ってきた。鑑賞を通じた音楽教育や地域への密着は、その運営理念の柱である。相性は見るからに良さそうである。
 もちろんそれは音楽面にも言えそうだ。ずっしりとした重厚感からダイナミックなパッションのほとばしりまで、劇的な表現を得意とする大植と、ひとたび火が付くと一気に紅潮する日フィル魂。いかにもぴったりではないか。
 そんなわけで何だか面白くなりそうな組み合わせなのだが、曲目面も一ひねりきいている。まずは日本フィルの看板奏者、コンサートマスターの木野雅之のソロでヴィヴァルディ「四季」。新春を寿ぐという意図だろうが、ここで大植がチェンバロの腕前を披露。自ら奏者の一人としてオーケストラに参加することで、ソロとオーケストラと指揮が入り乱れ、しかるのちに融合し、一体化するというシナリオか。
 後半はドヴォルザークの「新世界交響曲」だが、これほどまでに深く日本人の心に浸透する歌心にあふれた曲は他にないのではなかろうか。メロディの力で私たちを揺さぶる大植独特のイマジネーションが、日本フィルという翼を得て飛翔する。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)

第369回 名曲コンサート
2016.1/10(日)14:30 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp