太田真紀(ソプラノ)

西村朗とルチアーノ・ベリオの世界を求めて

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 現代音楽の演奏を主な活動に掲げ、腕ききたちが顔を揃える「いずみシンフォニエッタ大阪」。2月の定期では、音楽監督・西村朗の室内交響曲第5番「リンカネイション」を初演する。“輪廻転生”を主題に、西村の室内交響曲で初めて人の声を伴う本作品は、ちょうどこの号が出る頃に完成予定だ。そのソプラノ独唱には現代音楽のエキスパート太田真紀が起用された。彼女については2013年の東京オペラシティ『B→C』で披露した高い音楽性でご記憶の方も多いことだろう。
「曲は、死へ向かう秋から始まり、間奏の死の冬を経て、最後は転生の春で、新古今和歌集のテキストによる歌が入るとうかがいました。私は西村さんを、テキストを言葉として、また歌として捉える作曲家だと思っているので、特殊唱法を駆使するような大変怖いことにはなっていないだろうと想像しています」
 前作の第4番「沈黙の声」(2013)では、死の向こうに呼びかけ、返ってくることのない沈黙の声に耳を澄ませた西村が、今度は死からの再生を実存の声で歌う。
「私の声のイメージを、魚のような、水中の生き物と表現されていらっしゃいました。そんなしなやかな転生という意味のようです」
 指揮はイタリア在住の三ツ橋敬子。演奏会全体のテーマも“イタリア”だ。
「西村さんは、言葉を拡大して捉えるので、イタリアの作品と並べるのはとても面白いんじゃないでしょうか」
 曲目は他にレスピーギの「鳥」(1927)、シャリーノ「電話の考古学」(2005)、そして太田がベリオの「フォークソングス」(1964)から数曲を歌う。
「イタリアがテーマなら、ベリオは外せません。いずみシンフォニエッタの素晴らしいアンサンブルを聴いてもらうために、編成が多彩なこの曲を選びました。声の開拓者という意味でもベリオはシェーンベルクとともに重要です。私はジャチント・シェルシ(1905〜88)を研究しにローマに行きましたが、イタリアで現代音楽に関わる人はみんなベリオを天才と認めているのです」
 「フォークソングス」は難解な音楽ではない。題名どおり、歌はアメリカやシチリア、アルメニアなどさまざまな民謡の素材を歌い、そこにときおり、器楽パートがスパイスを効かせる。
「ベリオが素晴らしいのは、西洋楽器を使うことで、それぞれの民謡のルーツだけにとどまらない、普遍的な曲にしたこと。だからこそ今回も、いずみシンフォニエッタの皆さんと一緒に、ほかの誰とも同じではない、私たちの歌を作っていけます。お客さんが口ずさんで帰ってくれたらうれしいですね」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)

新・音楽の未来への旅シリーズ いずみシンフォニエッタ大阪 第36回定期演奏会
2016.2/6(土)16:00 いずみホール
問:いずみホールチケットセンター06-6944-1188
http://www.izumihall.jp