上原彩子が初めてフォルテピアノを演奏
古楽界の先駆者であり、近年はオリジナルとモダン双方の楽器の特性を生かしたマルチな活動を展開するフルートの有田正広が、指揮者として率いるオリジナル楽器オーケストラ、クラシカル・プレイヤーズ東京(CPT)。名手として国際的に活躍する上原彩子が、初めてフォルテピアノを披露するモーツァルトの協奏曲第17番をはじめ、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」や序曲「フィンガルの洞窟」と、今回のステージも野心的なラインナップへ挑む。
1989年に結成され、先鋭的な活動を展開した日本初の本格的オリジナル楽器による楽団「東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ」を発展させ、2009年6月に組織されたCPT。古典派以降に焦点を当て、日本ではオリジナル楽器での演奏経験がなかった作品へ、果敢な挑戦を続けている。今回は、02年にチャイコフスキー国際コンクールを制した上原が、19世紀前半のルイ・デュルケン製作の楽器に基づくレプリカを駆り、モーツァルトの佳品を披露するのが、大きな話題に。
さらに、このステージがオリジナル楽器による日本初演となる「スコットランド」は、クリストファー・ホグウッドの校訂による、最終稿(1842年版)に基づくもの。さらに、有名な「フィンガルの洞窟」も、「ヘブリディーズ諸島」と題されていた、ローマ版第2稿(1830年)を採用する。聴き慣れたように思える名曲も、オリジナル楽器独特の響きを纏うことで、全く異なる印象を与えるはず。特にメンデルスゾーンのほの暗い楽想とは、絶妙に共鳴することだろう。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
2016.2/6(土)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
http://www.geigeki.jp