銀座ぶらっとコンサート #161 アンサンブル天下統一 ~夏の陣~

凄腕弦楽トリオの熱いステージ

左より:鈴木康浩、中木健二、長原幸太

 名前はユニークだけれど極め付きの本格派。読売日本交響楽団コンサートマスターの長原幸太(ヴァイオリン)、読響ソロ・ヴィオラ奏者の鈴木康浩、ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール第1位で元フランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団首席の中木健二(チェロ)という名手3人による弦楽三重奏団「アンサンブル天下統一」。2014年、帰国した中木が、出身地・愛知県岡崎市シビックセンターからレジデント・アンサンブルの結成を請われて誕生した。同郷の天下人・徳川家康にあやかり、地方を拠点に全国を音楽で結びつけるべく名乗りを上げたというのが命名の由来だ。19年の東京初公演(Hakuju Hall)から2年。いよいよ銀座に登場する。江戸幕府を樹立した家康の都市改造計画第一弾で生まれた、400年以上も東京のど真ん中の街だ。

 三者が繊細に調和しながらも個性がスリリングに対峙する弦楽三重奏は、四重奏よりもソリスティックな魅力に溢れているが、ややもすると見過ごされがち。作品も18世紀後半の数十年間に集中していて、いわばバロックのトリオ・ソナタと古典派の四重奏の谷間にひっそりと咲くユリのような存在。プログラムは、最盛期を代表するハイドンの変ロ長調op.53-2(ピアノ・ソナタop.37-2の編曲)、やや遅れてそれを成熟した芸術の域に高めたベートーヴェンのハ短調op.9-3、そして20世紀フランスの粋人が、新古典主義の視点で往時を振り返ったようなフランセの一作。弦楽三重奏の歴史を凝縮した夏の午後。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2021年7月号より)

2021.8/24(火)13:30 王子ホール 
6/26(土)発売
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp