下野竜也(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

20世紀の抒情とダイナミズムがよみがえる

 邦人作品を面白く聴かせてくれる下野竜也が今回のプログラミングを通じて浮かび上がらせるのは、1930年代から40年代のアメリカと日本だ。

 バーバーの「弦楽のためのアダージョ」は36年に書かれたクァルテットの第2楽章を弦楽合奏曲に編曲したもので、38年にトスカニーニがニューヨークで初演して有名になった。沁みるようにひたひたと迫ってくる音楽で、いつしか著名人の葬儀などで用いられるようになった。交響曲第1番は35年から翌年にかけて作曲され、戦時中には改訂版も作られている。ダイナミックでのびやかな第一部、緊張感あふれる第二部、抒情的な第三部、変奏形式による第四部と、交響曲の構成を単一楽章、20分ほどに凝縮させた。

 ヨーロッパの伝統を咀嚼し、自らの抒情性や旋律性をアメリカ的な平明さで発揮したバーバーに対し、当時日本の作曲界において頭角を現していたのが伊福部昭。「日本狂詩曲」「土俗的三連画」といった管弦楽曲を経て、初めて取り組んだ大規模な作品が「ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲」だ。42年に初演された後、スコアが空襲により焼失したが、90年代になってパート譜が発見された。代表作「シンフォニア・タプカーラ」などのメロディーが聴こえてくるほか、ピアノの打楽器的な用法など、当時としてはモダンな書法も大胆に取り込んでいる。

 独奏は小山実稚恵。小山は下野の指揮で2017年にこの曲を取り上げており、凄まじい気迫で鍵盤を叩く姿は、今でも筆者の記憶に鮮やかに蘇ってくる。あの興奮が再び!
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年7月号より)

第343回 定期演奏会 
2021.7/28(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp