ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

名コンビ夏の再開、オケのパワー全開!

 順調に蜜月関係を築いてきた東京交響楽団と音楽監督ジョナサン・ノットだが、昨年以来、「第九」公演以外は思うように共演が叶わなくなり、歯がゆい日々が続いた。この5月も、前半は予定通りの来日ができなかったものの、下旬の特別演奏会2公演には間に合い、ついに本格的な公演での再会が実現した。筆者はマーラー「巨人」の日を聴けたが、演奏はもちろんのこと、ノットが「ただいま」「ありがとう」のメッセージを掲げたカーテンコールの盛り上がりは実に感動的だった。

 そして、早くも7月、定期演奏会での再共演が実現する。同コンビによる定期は2019年11月以来で、実に1年8ヵ月ぶりに“通常”のステージが戻ってくるのだ。演目は予定通りの2曲。まずR.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。彼らが幾度も名演を聴かせてきた作曲家であり、今回も明晰さと熱気を兼ね備えた快演になるに違いない。また、チェロ独奏を伊藤文嗣、ヴィオラ独奏を青木篤子、東響首席奏者のふたりが務めるのも注目。それぞれ国内屈指の名ソリストとしても知られていて、その力量を存分に堪能できる嬉しい好機となる。もう1曲はシベリウスの交響曲第5番。“ノットのシベリウス”は稀少だが、満を持して選ばれたのは、自然への感動と人生の喜びが込められた、胸を打つシンフォニー。しかも、第1稿は第一次大戦中、通常演奏される第2稿はスペインかぜの世界的流行期に書かれている。今こそ新たに感じとりたい名作のメッセージ、ノットと東響による万感の名演で。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年7月号より)

第692回 定期演奏会 
2021.7/17(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第81回 
2021.7/18(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 
http://tokyosymphony.jp